デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司

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2004.11.30関係づけることの自動化:セマンティック・ウェブ

11月7日から5日間、瀬戸内海に臨む広島市宇品のホテルで第3回セマンティック・ウェブ国際会議が開かれた。参加数500人は単一テーマの学術会議としては大変多く、この分野の関心の高さを示している。

御存知の方も多いと思うが、セマンティック・ウェブはW3CディレクターのTim Berners-Lee氏がWebを発明した当初から温めていたアイディアである。彼がWebで実現しようとしたことの一つは、誰もがインターネット上でハイパーテキストを共有できることだった。実際にこの目標はサーバやブラウザの普及により実現したといってよい。

しかしその先にもう一つ、まだ実現できていない目標がある。それは、ウェブスペース全体が人間の社会活動を映す鏡になること、あるいは社会活動の場そのものになることであり、さらにそのウェブスペースをコンピュータを使って分析することで人間の知的活動の性質を理解したり、共同作業を進める方法を見つけたりすることである。

このためには、ウェブスペースの文書やサイト、Webサービスなどあらゆる資源が提供するデータを人間だけでなく、コンピュータにも理解できるようにする必要がある。言い換えれば、渡されたデータに応じてコンピュータが適切な処理を実行できるように、データの意味内容を明示する手段が必要なのである。これがセマンティック(意味)という名前の由縁であり、セマンティック・ウェブがデータについてのデータ(=メタデータ)を扱うといわれる理由である。

例えば、すでにニュースやウェブログの最新記事の配信に使われているRSS (RDF Site Summary) 1.0はメタデータの利用形態の一つである。RSS対応のブラウザは記事のタイトルや要約などのメタデータを表示し、ユーザはそこから興味あるものだけを選んで全文をダウンロードするので、記事を効率よく読むことができる。

このRSS1.0(別種のRSSのもあるがここでは省略)はセマンティック・ウェブの基本的な仕様であるRDF(Resource Description Framework)を利用している。RDFは「この記事(s)は要約(p)という関係でこの文章(o)に関連付けられている」といった3つ組でリソースの関係を記述する。RDFは単純な文法のため汎用性があり、対象領域の語彙(オントロジー)を定義できれば、3つ組を繰り返し使うことでその領域のメタデータを記述できる。

しかし、ニュース記事ならばわざわざ配信されなくても、時々自分でサイトを見れば十分と思われるかもしれない。そこでもう一つ違う角度からセマンティック・ウェブを見てみよう。FOAF (Friend-of-a-Friend, フォアフ)プロジェクトは、参加者のサイトに置かれたFOAFファイルを手がかりに、Web上で次々と友人関係をたどっていくものである。FOAFファイルもRDFに基づくメタデータであり、あらかじめ決まった述語を使って友人のサイトやメールアドレスを書いておく。

コンピュータは、ある人から出発してその友人、またその友人というように、自動的に友人のサイトをたどっていく。ここで面白いのは、FOAFの語彙がウェブ全体で統一されているため、コンピュータは部分的な友人関係をウェブ全体で機械的につなげて大きな連鎖にできることである。このようにセマンティック・ウェブの意義は「断片的なデータを、意味を手がかりに検索と推論で組み合わせ、新しい情報を作り出す」ことにある。

今FOAFで起こっていることを推し進めると、セマンティック・ウェブが普及する頃にはウェブの捉え方は今よりももっとダイナミックなものになっていると思われる。Web上のリソースの意味内容がコンピュータに理解可能なように記述できれば、それを手がかりにして検索エンジンが正確に検索結果を出したり、関連するサービスを発見したり、適切な手順で他のサービスとの間でデータをやり取りしたりすることができ、ウェブは無数の自律的なエージェントの集まりのようになる。もちろんそのためには(今回の会議の趣旨でもあるのだが)、意味内容を記述する語彙(オントロジー)の整備が必要である。すでにW3Cは今年上旬にウェブ・オントロジー言語OWLの勧告を出しており、セマンティック・ウェブが浸透する条件は整ってきた。今後、技術的な進歩とともに、ウェブの捉え方が変化するフェーズに注目していきたい。

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※第3回セマンティック・ウェブ国際会議でデモをするOntopia社のLars Marius Garshol氏(奥のノートPC)とナレッジ・シナジー社の内藤求氏(手前のノート PC)。

画面ではOntopia Knowledge Suite (OKS)を使ってFOAFデータを操作している。