デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司

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2005.06.15メタデータを充実させる

デジタル写真や文書などのファイルには、メタデータという情報が埋め込まれているのをご存知だろうか?試しにデジタルカメラで撮った写真をAdobe Photoshopで開き、ファイルメニューからファイル情報をみると、EXIFプロパティとして撮影機種、撮影日時、シャッタースピード、フラッシュ発光など詳細な情報が記録されているのがわかる。

写真などのファイルにメタデータを持たせることは、コンテンツの整理や検索にとって大変有効である。写真整理のアプリケーションPhotoshop AlbumやiPhotoが写真を時間順に並べるときに、ファイルの作成日に関係なく撮影日時の順に並べることができるのも、ファイルに書き込まれているメタデータを参照しているからである。

一般に、写真や文書などのデータ本体に対して、そのデータを扱う上で必要になるデータをメタデータという。例えば著者やキーワード、使用言語などは文書の検索に必要なので、メタデータに含めておくのが適切である。またアプリケーション間の連携にとっては、メタデータを構成する項目がアプリケーションに依存しない方が都合がよい。そこで一般的な文書ファイルに共通するメタデータの項目は、Dublin Core Metadata Initiativeが提示したフォーマットを利用するのが通例になっている。上記のデジタル写真のEXIFも、電子情報技術産業協会JEITA(当時JEIDA)がまとめた項目が事実上の標準となっている。

さらに一つの文書を作るために複数のアプリケーションを使うワークフローを考えると、メタデータをファイルから読み書きするときの書式にも一般性がある方がよい。アドビシステムズ社は以前から同社のアプリケーションが作るファイルに、XML形式でメタデータを埋め込んでいる。この形式はXMP(Extensible Metadata Platform)として公開されていて、同社のアプリケーションと連携する外部ツールもメタデータを利用することが出来る。XMPは実際にはDublin CoreやEXIFのメタデータ項目を含み、さらに独自の項目も追加できるようになっている。

さて、メタデータとして記述すべき項目が決まっているとして、実際に個々のデジタル写真などについて、そのコンテンツを説明する言葉をどう書けばよいだろうか? ウェブの標準を整備しているWWWコンソーシアムでは、応用分野ごとに語彙を決めるという考え方のもとにセマンティックウェブの標準化を熱心に進めてきた。今年5月に幕張メッセで開かれた第14回WWW国際カンファレンスでも、セマンティックウェブは検索に次いで発表が多かった。確かに特定の分野に限定すればデータ交換に必要な基本語彙が合意できそうである。

しかし我々が日常生活で出会う場面や出来事を幅広く表現するには、厳密性を積み重ねていく標準化の作業ではカバーできそうにない。d_09_flickrgraph5そこで少し視点を変え、メタデータという点から最近人気のある写真公開サービスのFlickr(フリッカー、www.flickr.com)をみてみたい。Flickrのユーザは写真を自分のPCや携帯からアップロードできる。これだけだと普通のフォトアルバムと同じだが、Flickrのユニークな点は、写真に言葉のタグをつけることができ、そのタグで他のユーザが写真を検索できることだ。タグでの検索にうまく自分の写真がひっかかるためには、他人が思いつきそうな言葉を並べる必要がある。他人から写真に対してコメントを残してもらえるという楽しさもあって、ユーザは上手にタグをつけたくなる。するとFlickrで使われるタグの全体が、日常の場面を言い表すメタデータの集合に育っていくわけだ。


 Flickrには友人を招待するという機能もあり、友人同士でプライベートに写真を共有することもできる。この招待機能を使うと、自分に関する情報の欄に招待した友人が登録される。するとこんどは、Flickrのユーザ情報に友人関係というメタデータが付け加わっていくのである。Marcos Weskampはこのメタデータを利用して、FlickrGraph (http://www.marumushi.com/apps/flickrgraph)という友人関係をグラフ化して見せるツールを作っている。Flickrが公開している外部インタフェースをうまく使い、インタラクティブに友人関係のネットワークを探索していくツールになっており、一見の価値がある。

今後、セマンティックウェブの先には、複数のサービスが言葉の意味を共有して賢く連動する世界が開けるはずである。その一方でFlickrのようなボトムアップのアプローチには、正確さは保証できないけれども実用的なメタデータができるという点で、写真を含めた大量のコンテンツを整理できるまた別の可能性がある。最近Yahoo!に買収されたFlickrは、今後さらに他のサービスと連動していく発展が楽しみである。