デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司

m.c.t.ホーム > エクスペリエンスマガジン > デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司 > エンドユーザの身近になったXML

2007.07.12エンドユーザの身近になったXML

日常さまざまなアプリケーションを使いこなしている人でも、 XMLと聞くとデータのフォーマットという以上にこれまで意識することもなかったのではと思う。しかし最近では、 アプリケーション間の連携やデータの再利用の必要性から、XMLがエンドユーザの身近なところまで浸透してきた。一例を挙げると、 Microsoft Office 2007では、従来のバイナリデータに代わってXML形式でファイルを保存するようになった。 マイクロソフトはこれによって、蓄積されたオフィス文書から会社のロゴなど特定の箇所だけを探し出して一括で新しいものに入れ替える、 といった変換ができるようになるとしている。ここでのポイントは、従来だと個々のファイルを読み込んで変換する作業が必要だったのに対して、 XMLファイルにすることにより文書に対してアプリケーションの外側から操作できるということである。

Office 2007ほどドラスティックな変化ではないが、アドビシステムズなど他のソフトウエアベンダーも、 アプリケーションにXMLデータの書き出しや読み込みをする機能を組み込んでいる。レイアウト作業に多く使われているAdobe InDesign CS2では、ユーザガイドに書かれていないためあまり知られていないが、 テキストボックスや画像プレースホルダに一度XMLデータを対応付けておくと、 同様なXMLファイルから自動的にデータを読み込んでレイアウト上に配置する機能がある。現在バージョンアップ中のCS3では、 スクリプティングによってさらにXMLとの連携が強化されるとのことである。

また映像分野でもXMLの恩恵を受けられるようになった。例えばアップルコンピュータのビデオ編集ソフトFinal Cut Proでも、編集作業に含まれる映像シークエンスの情報をXMLで書き出したり読み込んだりできる。 一旦XMLに書き出すとエディタを使ってデータを取り出せるので、 これまでのプロジェクトで使われたメディアファイルのリストを作って一元管理するなどが簡単にできる。 画面に次々と発言内容をサブタイトルとして入れていくというもっと複雑な作業も、一旦テキストエディタで発言内容を書き出しておけば、 サブタイトル文字に相当する部分をXMLファイル内で繰り返し作り、そこに発言内容のデータを入れていくことで自動化できる。 このような繰り返し作業の自動化が特別なツールなしでできることは、エンドユーザにとって大きな助けになる。

XMLをファイルに書くときの基本は、開始と終了のタグで文字データを区切って要素を記述することである。 要素の記述の中には子要素を入れて階層的なデータを表現することができる。この単純な規則のおかげで、 XMLを扱うシステムは複雑な条件分岐をすることなく、データを読み込みながら機械的に階層構造を組み立てていくことができる。一方、 要素の名前や階層構造の作り方はアプリケーションを設計する人が決められるので、XMLは自在に拡張できる言語(eXtensible Markup Language)という側面も持っている。ユーザにとっては、 アプリケーションがどのような要素名や階層構造でXMLデータを書き出すかを知れば、 そのアプリケーションのデータを外から編集できることになる。

通常、要素がどのようなデータを表しているかは要素名でわかるので、XMLファイルは人間にとっても理解できる。 XMLの基本さえ理解しておけば、 あとは多少時間をかけて慣れてしまえばアプリケーションから書き出したファイルの内容がわかるようになるのである。 この現実的にとっつきやすいということは、 特定のデータを取り出して今すぐ再利用したいという目前のニーズがあるユーザにとって大きな利点である。

データベースの世界でも、XML専用に設計されたネイティブデータベースをいろいろ選んで利用できるようになった。 従来からリレーショナルデータベースに対しては、SQLという問い合わせ言語が標準化されていた。 これに対してXMLデータベースにもXQueryという問い合わせ言語が今年1月にW3Cによって制定された。XQueryは、 以前からXMLの変換技術として利用されてきたXSLTと相補って、 今後のXMLデータベースの普及を推進する上で重要な役割を果たすと思われる。 XQueryも基本的な使い方ならばすぐに習得できる言語であり、 一度慣れておくと膨大なXMLファイルの蓄積から必要な情報だけを取り出すのに有用な技術である。

実はXML自身は特に画期的な発明というわけではなく、 古くから使われていた括弧の入れ子でデータを記述する方式などより特別優れているわけではない。 それにもかかわらずXMLがこれだけ普及したのは、機械にも人間にも読みやすい形で構造化されていること、 文字コードの混乱がないようにユニコードを標準にしていることなど、現実的な応用を見ているからであるといえる。 データがますます重要な役割を果たすこれからのデザインにおいて、 アプリケーションから書き出されたXMLを理解して部分的に自分の手で編集したりできることは、今後大変有用な技術になるだろう。

 

図:XMLデータとXQueryを使ってFinal Cut Proでサブタイトルをつける作業を自動化する

FinalCutPro_XML