デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司

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2009.06.11インタフェースデザインとウェブサービス

最近人気の高いEverNoteは、ウェブページ、写真、ビデオ、テキストなどをスクラップのように保存するアプリケーションである。 インストールするとブラウザにボタンが組み込まれ、ウェブページの選択箇所をEverNoteにコピーできるようになる。 写真やビデオはEverNoteの中にドラッグ&ドロップし、テキストはペーストしても直接入力してもよい。個々のデータはノートと呼ばれ、 作成日時や元のURL、自分でつけたタイトルやタグとともに保存されている。

EverNoteにはウェブアカウントもあり、PCやMacで集めたノートをウェブ上のアカウントと同期(シンクロ)できる。 PCからウェブにシンクロすればどこからでも自分のノートを見ることができるし、 iPhone(iTouch)にシンクロすれば集めたノートをモバイル環境に持ち出せる。気になるものの情報を集めておいて、 店に行ったときにノートを見ながら実物をチェックするような使い方ができるのである。

EverNoteは今年5月、正式リリースから1年間で登録ユーザ数が100万人に達したそうである。 短期間でこれだけユーザを集めたことについて、開発者はブログに感謝の言葉とともに面白いことを書いている。 「急成長するインターネットサービスの秘訣はこれまで、(1)ウェブだけにサービスを絞ること、 (2)ソーシャルやクチコミの輪が広がるような特徴を盛り込むこと、(3)新しいもの好きの若者を取り込むこと、 (4)収益にこだわらないこと、などと言われていた。ところが我々が行ったのはまったく逆の方向で、 ソフトウエアはダウンロードするプラットフォーム依存型、(いまのところは)固有のソーシャルな要素はなく、 ユーザ層は大学生やもっと上の職業人、しかもそれほど遠くない将来に利益が上がる見込みのビジネスモデルもあった。」

彼らの言葉が意味するところは、使えるウェブサービスを求めている人は大勢いるということだろう。 そしていくら携帯が情報源になってきたといっても、やはり自由度の大きいPCは情報のストックに向いていて、 EverNoteは情報源のPCとモバイルとの間をウェブでうまくつないだということだと思う。 もちろん他にも同じような機能のサービスはあるのだが、EverNoteの人気は主に2つの優れた点にあるようである。

1つはユーザインタフェースの良さで、手軽にノートを集めることを優先しているので、とにかく操作が簡単である。上に述べた通り、 ブラウザのボタンを押せばページの切り抜きができる。その他にもう1つ方法があり、ブラウザに登録したClip to EverNoteというブックマークを押すとウェブアカウントに切り抜きが送られる。 このブックマークはJavaScriptのコードになっていて、 新しいページを開く代わりに切り抜きを送信するインタフェースをページの中に出すのである。 JavaScriptを使ってEverNoteのインタフェースを巧妙にウェブページに組み込んでいるのだが、 もちろんユーザはそのしくみを知らなくても切り抜き機能を便利に使える。 またローカルのアプリケーションはノートを組み込みデータベースのSQLiteに保存しているのだが、 インタフェースがよくできているためどうやってノートを保存しているのかも意識させない。 インタフェースデザインと技術の組み合わせがうまくいっている例だと言える。

EverNoteのもう1つの優れた点は、画像認識を使った検索技術である。 実はEverNoteがアカウントと同期することには意味があり、PCで集めた写真をウェブに送ると、 サーバ側で写真内にある文字を認識してローカルPCに返しているのである。 おそらくEverNoteは画像認識を使った付加サービスを考えていると思われるが、 そのためにもサーバ側に情報が集積するのが望ましいのであろう。認識できる文字はアルファベットだけだが、 商品名やサインなどはアルファベットで書かれていることが多いので、意外なところで文字が認識される。

EverNoteのサイトでは、自分なりの使い方をYouTubeのビデオで紹介するためのページを用意している。 例えばワインのラベルや料理のメニュー、チケットなどを写真に撮っておいて、あとから検索するという使い方もあるようである。 今のところは開発者チームが作ったビデオが多いようだが、こういった新しい使い方の思いつきを投稿するのも、 一方的な情報提供を置き換えるものとして面白い。ウェブ経由のサービスはこれから様々なものが出てくると思われるが、 EverNoteはインタフェースデザインと機能をうまく組み合わせて成功させているという点で大いに参考になるサービスである。


evernote

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポスターなど文字が画像に入っているものも文字認識で検索できる。