デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司

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2011.01.18コンテクスチャル・ナビゲーション

ウィキペディアをiPadで見るためのCooliris Discoverというアプリケーションがある。ウィキペディアのデータを雑誌のようなレイアウトで出してくれるのだが、その表示が洗練されていて美しい。

セクションや箇条書きなど文章の構造は同じで、タイトル文字を大きくしたり図に対する文章の量を抑えたりすることで、雑誌のような見え方にしているのである。 ウェブブラウザで見るウィキペディアは一つの記事を一つのページに収めていて、縦方向にスクロールして読む。一方Cooliris Discoverでは雑誌のレイアウトにこだわっていて、ページをめくるようにスライドして読むようになっている。複数ページになるので、画面の一番下には雑誌のようにページ番号まで打ってある。

それにしても、同じ内容をページレイアウトでこれだけ見やすくできるというのは、ブラウザに合わせることに慣れてしまった目に新鮮である。 Cooliris Discoverでは通常はiPadを縦に持つようになっているが、横に持ち替えると右の余白に関連する記事へのリンクが出るようになっている。ページ内にはあえてリンクを表示していないが、指で任意の言葉に触れるとその言葉を検索して小さいポップアップウィンドウが出る。2本の指でピンチする(指2本を置き、広げる/狭める操作)と記事内の各セクションへのインデックス、下から上にワイプする(画面片隅から反対側の画面片隅へ指を動かす操作)と履歴が出るのもiPadのアプリケーションらしい。基本はページを読むことに集中して、関連する場所へは指の動作で動けるようになっている。

Coolirisというベンチャーを2006年に立ち上げたメンバーらは、当初からコンテクスチャル・ナビゲーションのツールを考えていたという。コンテクスチャル・ナビゲーション(contextual navigation)とは、注目しているものに関連する情報を重点的に出すことで、ショッピングではアマゾンの関連商品の提示などがこれにあたる。デスクトップPCで動くCoolirisにもコンテクスチャル・ナビゲーションが活かされていて、映像や写真が無限に伸びる情報ウォールのように表示される。ユーザが写真や映像を選ぶと一つだけが大きくなり、見終わって小さくなるとまた情報ウォールの全体が見えるようになる。つまり写真や映像が並んだ壁によって、もともと検索結果を見ていたコンテクストを保持しているのである。 画像や映像の検索は、文章のように内容自体に含まれる単語を使うのではなく、ユーザが付けたタグを使うので、どうしても結果にばらつきがある。そのため、たくさんの検索結果の中から関係のあるものを探していくプロセスが重要になる。そのとき偶然に興味のあるものを発見する可能性があるので、ユーザにとってはある程度注意して画像を眺めていく価値がある。つまり検索結果の中に広告を入れると目に触れるチャンスが大きく、そこに画像や映像の検索が有力な広告媒体になれる可能性がある。

画像や映像の検索におけるコンテクスチャル・ナビゲーションは、検索結果の全体を見失わないようにしながら新しい情報の発見を助け、興味というコンテクストの中で発見と広告とを共存させるしくみにもなっている。今後ますますウェブのコンテンツに写真や映像の割合が増えるのにつれて、コンテクスチャル・ナビゲーションが重要になることは間違いない。Coolirisのようなツールの進化とともに、この分野が拡大していく様子に注目しておきたい。

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Cooliris Discoverでは、iPadを横にすると関連するウィキペディア記事へのリンクが表示される。デスクトップ用のCoolirisではFlickrやYouTubeの画像や映像の検索結果が情報ウォールに表示される。