“本能”から人間を読み解く - 佐藤武史

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2012.02.06感情の背景に"本能"アリ

はじめまして、僕は佐藤武史と申します。(株)大伸社m.c.t.で10年近くマーケティングコンサルティングのお仕事をさせていただいている人間です。このたび、エクスペリエンスマガジンにて記事を掲載させていただく運びとなりました。どうぞ、お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

さて、このシリーズタイトルは「"本能"から人間を読み解く」です。これを聞いて、みなさまはどのような内容だと思われますでしょうか。

僕たち人間の行動や心理の背景には、僕たちが生まれながらにして持つ"本能"の働きがあります。iPhoneをかっこいいと思う心理にも、フェイスブックを楽しむ感情にも人間の本能が関わっています。このシリーズでは、人間の持つ様々な本能的側面を新しいマーケット事情とあわせながらご紹介し、生物学的な人間理解のアプローチについてお伝えすることを目的とします。

ここで、「そもそも、人間を生物学的に理解することにどのような意味があるのか」、と疑問に思われるかもしれません。それには以下のようにお答えしましょう。例えば、ビジネスでは「消費者のニーズをつかむ」という言葉がよく使われますが、その「ニーズ」の背後には人間の本能が働いています。もしくは、デザイナーが創った椅子に対する「美しい」といった感情も本能の働きの一つです。すなわち、本能という原理原則を理解することで、ニーズや嗜好性を深く、体系的に理解していくことが可能になるのです。

本能の具体的な内容については次回からご紹介をはじめるとして、このシリーズでお話する本能に関する考え方(以下、本能論)の理論的な背景をご紹介いたします。人間理解に関わる学問・研究領域って、いろいろあると思います。心理学、脳科学、マーケティング、社会学、カウンセリング、デザイン論、歴史学、宗教学、哲学・・・。ただ、現状、それらの学問は、それぞれ独立して存在しており、それぞれに得意な分野、不得意な分野があったりします。例えば、認知心理学ではデザイン論の話題が薄かったり、マーケティングではカウンセリングの話題があまり登場しなかったり。僕がこれからお話しする本能論は、それらの学問の最小公倍数(各学問の内容を補完しあったもの)なのです。簡単に言えば、人間科学系の学問のほどよいミックスと言えるかもしれません。そのような学問のミックスを作り出すことで、はじめて、「人間ってどんな生き物なの」という問いに、部分的ではない回答を行うことができるのです。このエクスペリエンスマガジン上のシリーズでは、そんな本能の働きについて気軽にお読みいただけるよう、簡単なトピックごとにご紹介する形をとらせていただきます。

日本感性工学会という学際的な学会がありますが、その大会などに参加していても感じることがあります。それは、多くの研究者が、人間心理に関する法則をある程度シンプルに集約できるのではないか、と気づき始めているということ。僕の本業であるマーケティングリサーチにおいても同様です。消費者の根本的なニーズは、ある程度出尽くしているんです。だから、消費者のニーズを理解するという場面においても、今後は、「どんなニーズ?」とゼロベースで探索するのではなく、「どのニーズ?」というアプライの思考に変わっていくのではないかと予測しています。そんな今だからこそ、先立って、人間の本能について学んでいくことが大切なのではないかと思います。

前置きが長くなりました。次回から早速、本能の具体的なお話をしていきましょう!