“本能”から人間を読み解く - 佐藤武史

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2012.04.064つの原始本能 (生きる・新しさを求める・愛・力)

僕たちは日々何かを考え、感じながら生きていますが、その大部分に広義の"記憶"が関与しています。ホテルが快適だったらそのホテルにもう一度泊まりたいと思うし、遠い昔の記憶に懐かしさを感じたりもします(ノスタルジー)。

しかし、記憶が全てではありません(人間は全くの白紙で生まれてくる訳ではない)。僕たちは、育ち(記憶)に大きくは左右されない本能を持っています。そして、その"育ちに大きく左右されない本能"は4つに大別することが可能です。

はじめの二つは、"生きるための本能"と"新しさを求める本能"。前者は、食欲や睡眠欲といった肉体のホメオスタシス(恒常性)を保つための感情、身体的な痛みや恐怖といった危機を遠ざけるための感情が含まれています。後者は、いわゆる知的好奇心だったり、知覚能力・運動能力を超える時の快感(≒スリル)などが含まれています。これらは他者がいなくても、つまり自分ひとりだけでも成立可能な感情です。また、"好奇心、猫をも殺す(=あちこちに首を突っ込み過ぎると、命がいくつあっても足りない)"という言葉があるように、これら二つの本能群は、ゆるやかに相反するベクトルを持っています。

残る二つは、"愛を求める本能"と"力を求める本能"。前者は、恋愛感情、愛欲、友情といった多幸感をもたらす感情や、それらを喪失したときの悲しさの感情などを含みます。後者は、他人と比較したときに生じる優越感・劣等感や、自分を磨くために有益な達成感・向上心などといった感情を含みます。これらは基本的には他者が存在することが前提の感情です。また、これら二つの本能群は、他者に対する意識の面でゆるやかに相反するベクトルを持っています。

これらをモデル図として表現するとこのようになります。


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ところで、脳科学者のデイビッド・リンデンは、脳を「アイスクリームコーンのようなもの」と表現しています。ハーゲンダッツでアイスをシングルからダブル、ダブルからトリプルへと追加注文するように、進化の過程で機能がポンポンポンと追加されてきたことを意味します(解剖学的にも、脳は複数のアイスの塊のようなものです)。僕たちの本能はそれぞれ独立に働き、時として、ひとりの人間の中でも矛盾が生じる。「怖いもの見たさ」は生きるための本能と新しさを求める本能の対立であるし、「恋愛をとるか友情をとるか」という三角関係のモチーフは愛と力(友人に恋の競争で勝つ)の本能の対立。ひとりの人間の中でもジレンマが生じる構造になってしまっている。そんなところが人間の奥深さを演出しているようで、何とも面白く思えます。

また、実は、人間の根源的な感情の多くはこれら4つの原始的な本能として説明することが可能です。マーケティングで人間心理を理解しなくてはならない際、これらの知見が頭に入っているとその理解が容易になります。アートの鑑賞時も同様です。コンテンポラリーダンスを見ながらその面白さの答えを求めるとき、本能の知見が一助となるのです。もちろん、4つの本能群で人間心理の全貌を表現できる訳ではありません。例えば、「紋様の美しさ」や「正義」などの感情・思考は別の本能の働きによるものです。それらはまた別の機会にお話させていただければと思います。ですが、"結構"多くの感情がこの4つの本能群で説明できるのです。

今回は、そんなお話をさせていただきました。


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