“本能”から人間を読み解く - 佐藤武史

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2012.06.05『金環日食の仕組み』を信じる理由

先日(5月21日)金環日食がありましたが、僕も家族と一緒に家の中から眺めていました。うまい具合に雲がフィルターとなって目に優しい光の強さで届いたため、あの神々しい美しいリングをこの目にすることができました。

しかし、1500年代初頭にコロンブスが訪れた新大陸の原住民たちは、日食に対し、僕たちとは違う受け止め方をします。神の使者(だと演じる)コロンブスの魔法によって太陽が欠けてしまった、と。慌てふためく原住民たちにコロンブスは再び円形の太陽を取り戻してあげることで、原住民の服従を勝ち取ったと言われています。

ここに、一つの謎が存在します。僕たちは日食を、コロンブスの魔法だとは決して信じないでしょう。古事記や日本書紀にあるような「天照大神の岩戸隠れ」や、占星術で言う「恐怖の大王」だとも思わないでしょう。そうではなく、「太陽・月・地球が一直線となったときに起こる」という"科学的"な説明を信じます。しかし、不思議ですよね。本当に一直線になっている状態を自分の目で確認したこともないはずなのに、その理論を信じてしまっている。ここで言う謎とは、「僕たちはなぜ、"科学的"なものを無条件に信じやすいのか?」というものです。"科学的"というスパイスが振りかけられていると、真偽を確認せずとも信じてしまいやすい。「ブルーベリーにはアントシアニンが大量に含まれているので、目に良いんです」と説明されると、「へぇ、そうなんだ」と、"とりあえず納得"してしまう。その現象について本能論的に軽く考察してみたいと思います。

ところで、「光」はまっすぐ進むものです、、、という理屈は一般相対性理論が提唱された後では間違いで、光は重力によって屈折する。太陽光が薄まる日食の時、太陽に方向の近い星の位置は、太陽の重力のせいで「かすかにズレ」て観測されるそうです、、、といった話を聞くとそれを信じてしまうかもしれませんが・・・。

すみません、少し意地悪をしてしまいました。真実がゆらぐ"感じ"を体験していただきたかっただけです。以下、考察に進みます。

まず、カウンセリングにおける"暗示"のお話からはじめると面白いかもしれません。少し汚いお話で恐縮ですが、ある人が下痢で悩む友人に「これはよく効く下痢止めの薬なんだよ」と言ってある薬を渡し、友人は飲んだ。そして、下痢はピタリと止まった。しかし、実はその薬は"下剤"だった・・・。医者が用いるプラシーボ(偽薬)も同じ類のお話です。もう一つ、お話があります。ある時、僕が通っていたカウンセリングスクールの先生にヒプノセラピー(催眠療法)の実験台にされたことがあります。僕もサイエンス出身の人間なので、"催眠などにかかる訳がない"と思っていたのですが、彼に"椅子から立ち上がれない"という催眠をかけられると・・・本当に椅子から立ち上がれなくなってしまった・・・。悔しいし、立ち上がる意志はあるのに、肉体が従ってくれない・・・。これらの例は少し特殊でしたが、人は暗示(潜在意識レベルでの思い込み)によって、肉体にまでも影響を受けてしまうのです。

暗示に近しいお話ですが、同じくカウンセリングにおいてビリーフ(信条)という言葉があります。ビリーフとは、その個人が信じきっている価値観のこと。ある本で、こんなお話が紹介されていました。以下、抜粋です。

・・・かつて、"世界は近くを流れる川で果てる"と信じているニューギニアの一部族をある科学者のグループが訪れた。滞在して数ヶ月後、そのグループの一人が帰らなければならなくなり、その川を越えることになった。無事、川を渡り終えて、彼は振り向いて手を振った。しかし、部族の人たちはそれに応えなかった。なぜなら彼らには、その科学者の姿が見えなかったのである。世界に対する揺るぎない信念が現実の認知の仕方を歪めたのである・・・『アイデアのおもちゃ箱(マイケル・マハルコ著)』

もう少し身近な例で言えば、何か問題が起こったとき、それを「自分のせい」だと思いがちな方がいます。逆に、「他人が悪い」と思いがちな方もいます。大雑把な分類では、前者は鬱になる可能性が高く、後者は神経症になる可能性が高いそうなのですが、そういった性向も、ビリーフによるものです。オレは人の役に立っていない。オレは間違っている。そんな自分に関するビリーフ(信条)が、世界の見方をも歪めてしまう。

前置きが長くなりました。が、賢明な読者の方はもう、このお話の結論にお気づきでしょう。そう、僕たちは「科学は基本的に正しいものだ」というコンテキストの社会に幼少期から暮らしている。当然、科学に対して安直に信じない人はいるかもしれません。ですが、100%否定的な方は少ないものと思われます。「科学は基本的に正しい」という社会的な通念(=ビリーフ)が、僕たちの科学に対する盲目的な信頼を形作っているのです。

フランス人は脂肪を多く含む牛肉をたくさん食べるのに、動脈硬化になる割合が低い。この矛盾はフレンチパラドックスという言葉で有名ですが、その理由は、アントシアニンを多く含む赤ワインをよく飲むからだそうです。ここで、アントシアニンという化学物質について詳細に理解していないのに「なるほど」と思った方は、科学のビリーフをしっかりとお持ちですね・・・(しつこくて申し訳ございません)。ちなみに、僕も「なるほど」と思ってしまうタチです(笑)。

最後になりますが、学生時代、京都大学のとある世界的に有名な宇宙物理学の先生に質問をしに行ったことがあります。その質問とは、「先生は、宇宙のことを研究していて怖さを感じますか?」というもの。ブラックホールや巨大隕石など、人類を一瞬で蒸発させてしまう天体クラスのアクシデント、無限に続く暗黒の宇宙への底知れぬ畏怖、それらにまつわる感情を聞きたかったのです。ですが先生は、「怖くはない。こんなもの(物理学)はあくまで、一つの理屈にしか過ぎないからね」とおっしゃってました。科学の先端を担う方は、逆に、科学を盲目的には信じていない。そんな学びについて、思い出しました。

今回は、そんなお話をさせていただきました。


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