“本能”から人間を読み解く - 佐藤武史

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2013.02.04心の揺れを可視化する装置

仕事柄、アンケート調査やインタビュー調査を行うことがよくあります。そして、その場で、クライアント企業の現サービスへの評価や、新しい商品に対する期待などを聞いたりします。

「聞き手:現サービスへの満足度を点数で表したら何点くらいですか?」「被験者:70点くらいでしょうか」「聞き手:ではマイナス30点になっている理由は何でしょうかね?」「被験者:はい。それは、~」 ・・・ 「聞き手:それでは、このカードを見てください。このカードでは、今後発売されるかもしれない、新しい商品について説明されています。まずは、これを見たときに直感的に感じたことを教えてください」「被験者:いや、素晴らしいと思います。みんなが困っていたことをシンプルに解決してくれるような商品だと思いますよ」

もちろん、インタビュー調査やアンケート調査で得られるものは大きいですし、有益なインサイトを得るためのテクニックも数多く存在します。我々大伸社も、その領域にたくさんのノウハウを持っています。ただ、質問されると耳の痛いクエスチョンがあることも事実です。それは、「欲しいと回答しても、本当に買ってくれるんですかねぇ?」というもの。

ビジネスの場では、ユーザの評価を自社のプロセスに組み込むことが多いと思います。新商品の開発時にはコンセプトやプロトタイプによるユーザ評価テストを行ない、テレビコマーシャル作成時にCMのパフォーマンス評価を行ない、お客様に継続利用していただくために顧客満足度調査を行なったりと。ただし、そこに上記のクエスチョンが必ず付きまとってくるわけです。

そういったクエスチョンに100%の精度でYesと回答することは恐らく永遠にできないだろうと思いますが、従来の方法よりも高い精度でYesと回答することは測定技術の進歩によって可能になりつつあります。そのような新しい測定技術のひとつに、「バイオメトリクス(生体指標)の測定」というものがあります。今回は、この測定技術についてご紹介させていただきます。

バイオメトリクスのお話に移る前に、ユーザの評価を得る手法について少しだけ整理しておきたいと思います。

まず、ユーザの評価を得る手法は、大きく「主観評価」と「客観評価」に分けることが可能です。主観評価とは、ユーザが自分の主観を通して回答する方法。アンケートなどは代表的でしょうが、グループインタビュー・パーソナルインタビュー等も同じです。ユーザが自分の頭で考えた上で回答する。どの程度気に入ってくれたか(受容性)を測定できるだけでなくその評価の理由も質問できるのが利点でしょうが、一方で、その正確性には常に疑問が付きまといます。アンケートで「買う」と回答しても、「買わない」場合が多いからです。回答者に悪意はなくとも、主観評価には不正確さが伴う。

もうひとつのグループである客観評価は、ユーザの反応を何かしらの指標を通して得る方法です。ユーザの実際の行動を観察・指標化する方法、質問に対する反応の早さから理解のしやすさや記憶とのつながりを測定する方法(レスポンスレイテンシー)、脳の活動を測定する方法(ニューロマーケティング)、など。バイオメトリクス測定は、このニューロマーケティングにおけるひとつのカテゴリーです。

人間は、自分に得なもの/自分に害をなすものを認識した上で、何らかのアクションを行なう生き物です。焼肉が美味しそうだから食べに行く。虫が怖いから逃げる。これは太古の昔から変わらない人間の本能です。おもしろいのは、何かしらのアクションを行なう準備段階に自律神経系が活性化する、という特性があるらしいのです。つまり、焼肉を見て、香ばしいかおりを吸い込んで ⇒ 自律神経系が活性化し ⇒ 食べるアクションへと移る。そして、自律神経系が活性化する際には、心拍・呼吸・発汗・体の動きに微細な変化が起こります。そう、(勘の鋭い方はもうお気づきかもしれませんが)バイオメトリクスの測定とは、「心拍・呼吸・発汗・体の動き」の四つの生体指標(バイオメトリクス)を測定することで自律神経系の働きをモニタリングし、人間が次のアクションに備えている状態なのかどうかを予測する手法というわけです。

少し複雑で申し訳ございません。でも、すぐ簡単なお話に変化します。つまるところ、バイオメトリクスで良いスコアが出た商品は、アクションにつながりやすい。つまり、「よく売れる」、ということです。


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これは可愛いデザインのあしらわれたUSBメモリなのですが、左の2つがバイオメトリクスで良い評価が得られ、右の2つがあまり良くない評価であった。そして、実際のオンラインセールスの結果も、左の2つが右の2つに比べて圧倒的に売れた(アメリカの事例)・・・この予測性の高さから、アメリカでは、「どんなデザインにすればよく売れるのか?」というクエスチョンを解くためのツールとしてバイオメトリクスが広く使われはじめています。言い換えると、販売前にバイオメトリクスを用いて商品のチューニングを行ない、よく売れるデザインにした上で、実際の製造工程へと移る。バイオメトリクスのひとつの理想的な活用方法です。


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次の例もおもしろいです。左のグラフは、30秒のテレビCMを見たときの被験者のバイオメトリクスのUP&DOWNです。このCMの前半は盛り上がって、後半は盛り下がっている。バイオメトリクスを用いると、このような被験者の生々しい心の揺れが可視化されてしまうのですね。さらにおもしろいのは、このCMのパフォーマンスの悪い後半をカットした15秒CMを作ったところ、売上が大きく伸びた。

また、このCMはハイネケンのCMだったのですが、被験者がどこを見ているのか(アイトラッキング、右写真)を確認したところ、CMの最も盛り上がっている瞬間にハイネケンのボトル"ではない"場所を見ていた(!)・・・つまり、せっかくの場面をブランディングに活かせていなかった。こういった視線の分析と合わせ、バイオメトリクスは企業に有益な情報を提供しています。

もしあなたがデザインの優劣を判断したり、デザインを改善するといった業務についているのならば、もしくは何かしらのユーザの評価を得る立場にいるのならば、そんなバイオメトリクス調査を検討してみてはいかがでしょうか。

大伸社も、バイオメトリクス調査の代表格であるInnerscope Research社(本社:ボストン)と業務提携し、同サービスを日本国内で提供しています。バイオメトリクス測定用のベルトを体にひと巻きするだけの簡単な装置で、測定が可能です。ご興味あればお気軽にお問い合わせください。

本日は、心の揺れを可視化するひとつの手法として、"バイオメトリクス"を簡単にご紹介させていただきました。


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