“本能”から人間を読み解く - 佐藤武史

m.c.t.ホーム > エクスペリエンスマガジン > “本能”から人間を読み解く - 佐藤武史 > "顔"に関するいろいろ(I/O)

2013.04.08"顔"に関するいろいろ(I/O)

"顔"と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?「表情から気持ちを推察する」ことを思い浮かべるかもしれません。「個性」という言葉が頭に浮かんでくるかもしれません。女性ならお化粧を思い浮かべるかもしれません。「顔認証」という言葉が頭に浮かぶかもしれません。もしくは、大切な人の顔を思い出すことで、あなたの"顔"にあたたかな微笑が浮かぶかもしれません。

言うまでもなく、社会的な生き物である人間において、"顔"という器官はそのコミュニケーションを成立させるための非常に重要なファクターです。そして、僕たちは顔を読み取って(Input)、何かしらのアクション(Output)につなげます。10万年前ならば、走ってきた仲間の表情から恐怖のニュアンスが読み取れると、猛獣などの外敵が近づいているのではないかと推測するでしょう。現代でも、仲間の笑顔を見ると、もっと会話を盛り上げようとするでしょう。僕たちは日々、そういった顔にまつわるInputとOutputを繰り返しています。

ビジネスにおいても、"顔"は重要なファクターです。ホテルマンならば、お客様の表情を読みとった上でサービスの仕方を変えるかもしれません。調査・コンサルティング業の人間も、お客様の顔から、こちらの提案に対する理解度・納得度を細かく読み取ったりします。化粧品メーカーなど、"顔"を作り上げることをサポートする企業もあります・・・それらの企業は、「元気に見える」「大人っぽく見える」など、他者にこう見られたい(こうInputしてほしい≒化粧する)という女性の気持ちをビジネスとしていますよね。または、顔を読み取る技術が飛躍的に高まったことを受け、そのInput/Outputを活かしたアプリや機器が、市場にたくさん出回ってきています。

「ビジネスにおいて、"顔"にまつわるInput/Outputがどう活かされているか?」今回は、人間の"顔"にまつわるそういった考え方やテクノロジーについて、少し整理してみました。

大前提のような話から始まりますが、人間の脳の側頭葉・後頭葉のあたりには「顔領域」という領域があって、僕たちはそこを通して他者の顔を理解していると言われています。人間の「顔領域」は他の動物に比べても大きく、それは人間にとって他者の顔を読み取ることがいかに大事かを物語っています。もし、顔領域に損傷が起こると、「相貌失認(人の顔が分からなくなる疾患)」になってしまいます。

wikipediaによると、「相貌失認:目・鼻・口といった個々の顔のパーツや輪郭などを知覚することはできている。しかしこれを全体として「一つの顔」として正しく認識することができないため、人間の顔の区別がつかない、覚えられない、男女の区別、表情がわからないといった症状を訴える。よって、発症者は個人の認識を着衣や声といった、顔以外の情報により行なっているケースが多い。なお、同じカテゴリーにあるものを区別することが困難であるため、たとえば車の車種の区別などがつかないという症例を併発する事例も報告されているが、これを相貌失認と同一視すべきかについては議論がある・・・」だそうです。

また、表情研究で有名なポール・エクマン教授は「感情よりも表情が先」ということもあり得ると語っています。例えば、彼の著書には正しい"悲しい顔の作り方"が載っていて、その通りに悲しい顔をしてみると、確かに悲しい気分になってきます(ご興味があれば、著書をお買いになって実験してみてください・・・僕は涙まで出てきました・・)。どちらにせよ、今回のテーマである"顔"は、我々の感情にも密接に関わっているものだと言えます。

それでは、大前提のお話を終え、本論に戻ります。

●人を見分ける(セグメンテーション)

例えば、顔認識に基づいて年齢や性別を判定する。ソニーのテレビ「BRAVIA」には、子供が近づきすぎると画面が消える「近すぎアラーム」機能が搭載されているものもあるようです。

また、全くのローテクですが、「人相占い」は顔や雰囲気からその人の相を読み取ります。八相(貴相/福相/威相/寿相/貧相/孤相/悪相/夭相)のどの相の人間なのかを鑑定し、人生のアドバイスを行います。

レベルがバラバラのお話で混乱させてしまうかもしれませんが、大きくは、顔というInputからその人のタイプ(セグメント)を読み取り、何らかの行為(Output)につなげる、ということです。

●個人の判別

上述のセグメンテーションは個人のタイプを判別するものでしたが、各個人を判別するタイプの技術もあります。ハイテクでは、顔による個人認証に基づくセキュリティだったり、撮った写真からその人の名前を画面に表示する機能などもあったりします(電話帳に顔写真の登録が必要)。

●気分・表情を読み取る

最近の多くのカメラには「スマイルシャッター」機能がついています。表情や、そこから気分を読み取るタイプのお話です。

テクノロジー系では、「気分に応じて、プリクラの背景が変わる」「気分に応じて、テレビ番組をレコメンドする」といったエンターテインメントのOutputもあれば、「眠りを検知して居眠り運転を防止する」といった安全系のOutputもあります。

また、NLP(神経言語プログラミング)にはアイ・アクセシング・キューという、"視線の方向にはその人の考えが反映される"という法則が紹介されています。例えば、「左上に視線があるときは過去を思い出している」といったように。この情報の活用方法(Output)は、相手の考えを読み取ることで、相手に合わせが会話ができ、コミュニケーションが円滑になる、といったことです。

直近では、南カリフォルニア大学で開発されたバーチャルの「SimSensei(Sim先生)」がクライアントとコミュニケーションをとり、うつ状態の判別につなげるサービスがあると報道されていました。体の動きや表情を読み取って、その時の気分を判別する(最後はカウンセラーによる判定だそうですが)。ここでは、うつ状態の判別だけでなく、クライアントのうなづきや伏し目になった表情などを随時判別し、Sim先生がスムーズなコミュニケーションをとる・・・そういった細かなInput/Outputも導入されています。例えば、クライアントが伏し目になったら、「答えに詰まったみたいね?」とSim先生が気遣いの言葉を即座に入れる、など。


1_0405.jpg


●顔のパーツを読み取る

カメラに「瞳を大きくする機能」がついている場合、目や瞳を判別(Input)した上で、その画像を加工する必要があります。気分や表情の読み取りに必要な基礎技術とも考えられます。

●位置や動きを読み取る

顔の位置にフォーカスを合わせてシャッターを切る。これは場所がInputとなって、シャッターがOutputとなるタイプの処理です。ただ、これがAR(拡張現実)に発展すると、面白いサービスになっていくと思われます。


2_0405.jpg


これは、白い服を着た女性が画面の中では緑や赤の服に着せ替えられているというARの事例です。体を振ると服もゆれ、実際に服を着ているかのようです。これに、先述の気分判定を組み合わせると、その時の気分に合わせた洋服のレコメンドがこの画面上でなされることになるでしょう。そうすると、気分がInputとなって、洋服のレコメンドがOutputとなります。

●再び:気分・表情を読み取る(リサーチ)

前回のエクスペリエンスマガジンで紹介したバイオメトリクスだけでなく、表情から感情を読み取ることも調査に活用できます。米国では実際にそれらの開発が進んでいます。例えば、パソコンの画面でテレビCMを見てもらいながらウェブカメラで表情と視線を読み取って、CMの各シーンの気分や関心を調査する、など。

個人的に想像しているのは、「レストランの出口にカメラをつけて、お帰りになるお客様の表情を分析することで満足度調査ができる」「CMのタレントの表情をコード化し、それと売上の相関を見ることで、最適な表情のあり方が算出される」など。それらを実現することも今では難しくないと思います。


本日は、"顔"にまつわるInputとOutputについてバラバラと事例をご紹介させていただきました。人間の活動全般の中で"顔"が重要な役割を占めるならば、顔に関連するテクノロジーやノウハウがビジネスに役立つ可能性はあるでしょう。今回の記事があなたのビジネスに"顔"の考えを取り入れるきっかけになれれば幸いです。

・・・最後に、表情と本能の関係についてお話します。まず、表情は本能的な反応の現れであることを誰も否定はしないでしょう。例えば、腹が立っているときには怒りの表情となっていて、嬉しいときには笑みが浮かんでいる。ただし、全ての本能的な反応が表情に現れている訳ではありません。ゲームに熱中していても、表情は無表情になっていることがあります。すなわち、「表情は、本能的な反応が"部分的"に現れたもの」と言うのが正しいでしょう。それゆえ、表情から感情を読み取る際は、そこを差し引いて理解するする必要があります。

また、その人の本能的な反応は各人の中で蓄積され、強化されることもあります。例えば、他者への嫌悪という本能的な反応が体に染み付いていると、眉間の間の皺がその人の表情のデフォルトになってしまうでしょう。人相占いの方は、こういった蓄積を読み取るスキルを持った方だと言えそうです。


★よろしければ、本メルマガと併せて以下のメルマガもご購読ください。本能論をヒントとしながら、ビジネスのアイデア開発をサポートするコンテンツをご提供しています。

注意!】本メルマガ登録と同時に、まぐまぐのオフィシャルメルマガが複数登録される仕組みになっています。不用な方は大変お手数ですが、「読者登録完了のお知らせ」メールでそれぞれ登録解除いただけますでしょうか。

メルマガ購読・解除