“本能”から人間を読み解く - 佐藤武史

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2013.06.18文明の表と裏のアナロジー

科学技術や社会の仕組みの進化には、表と裏があります。

例えば、スマートフォン。スマホひとつあれば、朝のニュース、仕事の電話、外出先でのメールチェック、ディナーの予約、寝る前のコミック鑑賞、休日に子供の写真撮影といったように、数多くの便利さと楽しみを享受できます。しかし同時に、スマホ依存症になったり目が悪くなったりと、裏の面もある。

ただ、それをビジネスの視点で捉えると、表と裏の二側面にビジネスチャンスがあると読み替えることができます。

スマホの例ならば、表のビジネスチャンスとは、スマホの機器メーカー(Appleなど)、通信会社(ソフトバンクなど)、またはスマホアプリの制作会社など。一方、裏のビジネスチャンスとは、眼科(病院)やメガネ屋さん、もしくは、製薬メーカー(目薬)だったり。

今回のエクスペリエンスマガジンでは、文明に表と裏が生じる本能論的な意味合いと、それを将来のビジネスにつなげるアナロジーについて(≒簡単にビジネスアイデアへとつなげるための視点について)お伝えしたいと思います。

まず、本能論的な意味合いですが、これはシンプルです。僕たちは基本的に4つの原始本能信条・ビリーフに従って生きており、環境が変わるとそのバランスが崩れてしまう。以下、例をあげながらご説明します。

10万年前、人類は食料が十分にはない環境に暮らしていました。そのため、基本的にはおなかがいっぱいになるまで食べ、エネルギーを体内に貯蓄することが必要でした。ひたすら「美味しい!」という快感に従って生きることが良いことだったわけです。しかしご存知の通り、食べ物があふれる現代においては、その快感に従いすぎると生活習慣病になってしまう。バランスが崩れるとは、そんなニュアンスです。食べ物を簡単に手に入れられる社会の仕組みによって、本能的なバランスが崩れてしまった。ここで文明の表の面とは「簡単に食べ物が手に入ること」、裏の面は「メタボ」となります。

※ちなみに、現代人は「肉を食べすぎている」そうです。特に、牛肉や豚肉といった"人の体温では溶けづらい脂肪"を含む動物肉は体の許容量を越えてあふれ(オーバーフロー)、人により様々な症状として出てくるそうです(皮下脂肪が付く人もいれば、内臓脂肪が付く人も、もしくは、アトピーとして出る人もいる)。動物肉を簡単に手に入れられることが表で、オーバーフローが裏。

以下、生活習慣病以外の事例をいくつかご紹介します。

【事例1】抗菌グッズ

かつては、現代のような殺菌力・抗菌力のある商品など存在せず、人類は菌や寄生虫と共生しながら生きていました。しかし、特に現代の日本には強力な抗菌グッズがあふれ、簡単に菌たちを殺せてしまう。そして、そのようなグッズは、人間を悪質な菌やアレルギー物質から守ってくれる常在菌(善玉菌)まで殺してしまい、かえって人間にとって有害な菌を繁殖させてしまうことにもなりかねないそうです。それをアトピーの原因とする研究者もいます。

しかし、人間には洗浄の本能があるため、またさらに、キレイ好きという日本の文化も後押しして、殺菌・抗菌の文化は瞬く間に浸透してしまった。いちど、殺菌・抗菌に手を出すとその行為はやめられないし、「そんなことやめて汚く生活しましょう」と言っても違和感を持たれてしまうでしょう。

この場合は、抗菌グッズの販売が表のビジネスで、アトピーの対処療法が裏のビジネス。根本は、抗菌グッズの出現と人間の洗浄の本能から生じた、いきすぎた殺菌・抗菌。

【事例2】カーナビ

カーナビがあるお陰で、僕たちは道に迷う不安と非効率から開放されました。行きなれていない場所をドライブする際などは、本当に役立っています。しかし一方で、これまで誰も通らなかったような細い生活道にナビが誘導し、そこの住民が迷惑するという問題も生じています。また、地理的な勘が鈍ったり、自分で道を選べなくなってしまうなど、人間の能力の衰えも弊害として考えられます。

その場合、カーナビのメーカーや周辺のアプリ開発者が表のビジネスで、裏としては、そこから生じた問題を解決するところにビジネスのチャンスがあります。

繰り返しになってしまいますが、科学技術や社会の仕組みが進化したときに人間が本能的な誘惑に打ち勝てず、いきすぎてバランスを崩し、別の問題が生じる。それがこの表と裏の仕組みというわけです。

このアナロジーは、将来のビジネスアイデアを考える上で参考になります。簡単に言えば、「進化する科学技術や社会の仕組みを見つめ、その裏を考える」ということ。

【例1】自動運転

自動車の自動運転があたりまえになったとすると、それを支える表のビジネスは大きくなるでしょう。例えば、走行中のエンターテインメント。運転しなくていいのならば車の中で映画でも楽しめれば良いという発想です。一方で、運転のまったくできないドライバーも生まれてくる可能性がある(裏)。そうすると、そんな彼・彼女がたまに自分で運転でもしたくなるときにビジネスのチャンスがあるかもしれません。自動車に運転能力回復トレーニング機能が付いたり、教習所のペーパードライバー講習が今よりももっと使われるようになったり、と。

【例2】薬のネット販売

薬をネットで買えるようになるのは純粋に便利で魅力的です(表)。しかし、薬の依存症になる人が出てくるかもしれません。例えば、風邪薬を毎日飲まないと風邪をひいてしまうのではないかと思ってしまう、など。すると、薬の依存症になった人に対するカウンセリングビジネスも出てくるかもしれません(裏)。

実は、「裏」にも二種類あります。それは根本療法と対処療法の概念に近いものです。

先述のオーバーフローの話では、「肉を絶つ指導(書籍販売や講習会など)」が根本療法ビジネスで、「ステロイドを塗ってアトピーを治す」が対処療法ビジネス。根本療法ビジネスのほうは、表のビジネス(肉の販売)を否定することで成立します。ただ、表のビジネスのほうがマジョリティであるため、裏の根本療法ビジネスはニッチになりやすい(肉を食べる人が多数で、肉を断つ人は少数、ということ)。

ただし、イノベーションの視点では、より強力な根本療法を目指すことも可能かもしれません。例えば、「肉を食べれば食べるほど、オーバーフローが改善される」といった方向の発想。経済発展(表)と環境保全(裏)という大きなトレードオフに関しても、社会活動家のグンター・パウリ博士がブルーエコノミーという概念で同時に解決することを標榜しています。同氏の講演会では、果実のなる木から果実をとるだけでなく、枝(燃料)や幹(建材)などあらゆる部位を活用することで、産業創出・雇用問題・環境問題を同時に解決したという事例を挙げられていました。

こういった根本療法と対処療法を見据えつつ、ニュースを見ながら、紙面を賑わす新しい政策やテクノロジーの表と裏に想いを馳せてみてはいかがでしょうか?


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