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2006.11.30イノベーションのためのツールとは?

アメリカの企業が今、大好きなことばが「イノベーション(革新)」である。恵まれた社会になって市場が飽和した現在、企業にとっての新しい活路をさぐるために、このイノベーションは重要なキーワードになっているのだ。

イノベーションとは、何も画期的な発明をすることだけを指すのではない。これまでと同じ目的を果たす製品をちょっとした工夫を施すことによって実に使いやすいものにしたとか、あるいは組織内の人員構成を変えたところ思いもよらなかった製品が開発されるようになったとか、要は物事への見方を少し変えるだけで持続的に新しい世界が生まれてくる、そうした方法を意味しているのだ。

最近は、企業の中におけるイノベーションの度合いを計測し、イノベーションを促進するいろいろなツールが考案されているのはおもしろい現象である。これまでならば、個々のケース・スタディーを読みながら、参考になるやり方や考え方を探っていたのだが、多数の成功例を一般化するという作業をへて、今度はそのベスト・プラクティスを逆にツール化して普通の企業環境の中にあてはめてみようというわけである。そのひとつをご紹介しよう。

「イノベーション・レーダー」は、ケロッグ経営大学院教授のモハンビア・ソーニーが開発した方法論。企業活動の核をなす4つの要素を計測することから始まる。4つの要素は、その企業が提供するもの(WHAT)、顧客(WHO)、ソリューション(HOW)、そして市場へ製品を提供する際にどこを接点にするか(WHERE)である。これを計測した後に、さらにどの方向へ向かって拡張可能なのかを探る。その方向には、顧客エクスペリエンス、価値把握、プロセス、組織、サプライチェーン、プラットフォーム,ネットワーキング、ブランドなどである。この計測ツールを用いることによって、単なる新製品や新技術という範囲を超えたイノベーションの体質を築くことができるというのが持論である。その計測のためのコンピュータ・プログラムも開発しているらしい。この方法に達するまでにソーニー教授は500もの実例を分析した。

たとえば日産自動車は、イノベーションをプラットフォームの分野で行った。この場合プラットフォームとは製造の基盤。日産は同じエンジン・ブロックを用いながら高級車のセダンからミニバン、スポーツ・クーベにいたる各種の新車モデルを打ち出したのである。

あるいはレンターカー大手のエンタープライズ社は、顧客と市場との接点の部分でイノベーションを起こした。これまで最も利用が多いとされた空港付近でなく、住宅地や繁華街に窓口支店を多く設けて、他社との差異化をもたらしたのである。

企業はイノベーション・レーダーの12項目を参照することによって、弱点をあぶり出し、強みを認識して、そこからまだ手を付けていない方向へ向かって舵取りをすることができるようになる。やみくもにイノベーションの必要を叫ぶのではなく、こうした計測と推進の方法論が必要になった背景には、ビジネス自体の土壌が複雑になり、その中での競争力を養っていくにあたって客観的かつ実用的、さらに個性的な道のりが必要になったということだ。

人類が進化したのは、道具をつくったことではなく、道具をつくる道具をつくったことだと言われるが、自らを前へ推し進めるもうひとつの工夫をこらすことこそ、現在のビジネスにとって重要なポイントなのである。