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2007.03.30アップルの新製品iPhoneのシークエンス・デザイン

今年初めのマックワールドで発表され、今年6月にアメリカで発売されるアップルの電話機、iPhone。すでに世界中で人気が高まっていて、長いウェイティング・リストが出てきているといううわさもある。

アップルの製品は、GUI(グラフィック・ユーザーインターフェイス)のデザインがいつもユニークなことで知られている。使いやすさをかたちにすることでは、他のコンピュータ・メーカーがなかなか追いつけないところだ。音楽と動画のプレーヤーでありストーレッジでもあるiPodは、トラック・パッドというホイール状の面白く楽しいスクロール・デバイスで、さらに人気を得た。
新しいiPhoneがいったいどんな使い勝手なのか、デモを何度も見ながら分析してみた。

ご存知の方も多いと思うが、iPhoneの一番の売りは「指による入力」である。トラック・バッドも指を使っていたが、iPhoneはスクリーンに直接指をあてて画面をスクロールしたりクリックしたりする。クリックという表現はあまりにキーボードやマウス寄りなので、ここではタップと呼ぶことにしよう。

映画『マイノリティー・レポート』で、トム・クルーズが三面のスクリーンの真ん中に立って、ジェスチャーで画面を動かしていたのを覚えておられるだろう。iPhoneの指による入力は、もちろんまだあそこまでは到達できていないものの、なかなか近づいているなという感触を与える。

スクリーンを指で上下に動かすと、画面がダイナミックに上下にスクロールされる。よくゲームに統合されているアクセラレーター(加速ソフト)も盛り込まれているので、たとえばコンタクト・リストをスクロールしているとすると、最初はゆっくり、次に速度を上げ、最後にまた速度が遅くなる、という実に感覚的なつくりになっている。目的のアイテムが出てきたところでタップすると、画面が次に切り替わる。

まずは、画面自体が大きい。それ自体がこれまでの電話機になかった驚きのフィーチャーなのだが、ハードな物理的なボタンはひとつしかないというのも、電話機では考えられない。つまり、すべての操作は指によって行うというわけだ。

指の動きは、スクロール以外に、1回タップ、2回タップ、そして親指と人差し指を対角線上に延ばしたり縮めたりして、写真のイメージを拡大、縮小するというのがある。あまりに面白いので、目的もなくやたら入力を繰り返してしまいそうである。

マルチタッチスクリーンと指のジェスチャー入力という、ハード技術が支える上記のようなしくみも十分面白いのだが、うなってしまったのはまさにGUIの部分である。そうした技術がある上で、さてどうやって使わせるのか。そのあたりにかなりの力が注入されたのがよくわかるのだ。これこそ、まさにiPhoneの真髄だと感じた。

何が面白いのか。それは、ユーザーがある機能(たとえば電話)の中のあるモード(たとえば電話中モード)にある際に、次にどんなことをやりたいか、どんなことをやる可能性があるのかをとことん考え、その上でひどくシンプルな選択肢を美しく、タイミングよく目の前に見せてくれることである。

電話をかけているとしよう。通話に入ると、保留/コンファレンスコールにする/ミュート/スピーカー/キーバッドを出すなどの選択肢がすぐさま画面に出てくる。あるいは、写真を拡大したり縮小したりしていると、すぐにメールで送る/壁紙にするなどの選択肢のフレームが下から出てくる。

iPhoneのデモをよくよく見てみてわかったのは、アップルはこのユーザーのシークエンスづくりに非常に長けているということだ。とかくユーザーインターフェイスを考えるにあたっては、論理的に構築しなければならないと縛られがちだが、彼らのやりかたは一見論理的に見えるが、実は人間の行動をよく観察して、ユーザーの心理をうまく拾い上げているということである。論理的に見えるのは、それの拾い上げた結果を親切なわかりやすい絵や図、表やフレームにして見せてくれるからである。


シークエンスのデザインに優れているということは、ユーザーが目的のボタンを目を凝らして探さなくても、先取りして「こういうことでしょ?」と見せてくれる。そのやり方が繊細かつスマートだということである。論理ではこういう順序、というアプローチではなく、それをかいつまんで必要なものだけを教えてくれる感じだ。

そもそも人間の行動など、完全に論理的であるはずはない。「気の向くまま」が一番いいのである。ユーザーを考えるにあたって、要はその「気の向くまま」をどれだけ理解したか、それをどれだけ気持ちいいものとして置き換えられたかがUIの結果の違いとなって現れる。そんなことを、iPhoneのデザインから学んだ。

 

アップル社HP
http://www.apple.com/iphone/

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