米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2007.06.01ユーザー・インターフェイスには、まだまだ未踏の地がある

先だって、ロサンゼルスで開かれたマイクロソフトのウィンドウズ・ ハードウェア開発者会議(WinHEC)へ行ってきた。ビル・ゲイツと並んで基調講演を行ったクレッグ・マンディ (マイクロソフト研究所所長)のプレゼンテーションが面白かったので、少し紹介しよう。

マイクロソフト研究所は、本社シアトル以外にもシリコンバレー、中国、 インドなどに多数の研究者を抱えて、ハードウェアやソフトウェアの先端研究を行っている。研究分野は多岐にわたり、 以前私が訪れたシアトルの研究所では、2つの大型スクリーンをひとつのものとして機能させる技術、マジックハンド(棒状の物体) を操るだけで室内環境や機能のさまざまなコントロールができる技術、 その人の忙しさや仕事の進行の程度に応じて電話やメールの優先順位を決定する技術開発などが進んでいた。

今回、マンディ所長がやったプレゼンテーションの中心になったのは、 途上国向けの技術である。実は途上国向けの技術開発や製品開発は、現在のアメリカ企業では潮流を作りつつある分野である。 途上国と言えば、これまで援助の対象としてしか見られていなかったのだが、 最近は大きなビジネスの潜在力を持った市場として目されているのだ。生活用品会社が、安価な容器を現地生産したり、 小分けして販売するロジスティックスなどの工夫を凝らすようになっている。

マイクロソフトの途上国向け技術は、医療、 それも医者のいない場所での遠隔医療や読み書きができない住民のための医療サービスに関するものだ。会議で披露されたのは、 医療キオスク。気分の優れない病人や子供が病気になった母親らがキオスクへ行き、医師の指示をもらうための装置である。

まずは症状を伝える。「血が出た」「からだが熱い」「意識がない」 などの症状は、すべてピクトグラフ状に描かれたアイコンで選択する。文盲者のためのインターフェイスだ。 そこから症状をさらに詳しく説明する選択肢が続く。説明が十分なレベルに達したところで、 キオスクはその症状に対応できる医師をスクリーンに呼び出し、医師とカメラを通して対話できるしくみだ。

あるいは、携帯電話を経由するサービスでは、 ピクトグラムの代わりにビデオ収録された女性が出てきて対応する。わかりやすさと安心感を与えるインターフェイスである。

もっと進んだキオスクでは、IDカードを挿入して既往症を伝えたり、あるいは血液を取ってカプセルに入れれば、 遠隔地からの血液検査までできるという機器(これは別会社の開発によるもの)も組み合わせ可能だ。 地理情報との組み合わせによって、近くの医院へ行くよう指示することもあるが、 その場合はその場所がよくわかるように写真が出てくる。

身体障害者向け技術と同様、開発途上国向けの技術にも、 実は健常者や先進国のインターフェイスとして参考になるアイデアがたくさんある。 コンピュータの使えない高齢者や過疎地域の住民などはもちろんのこと、普通のコンピュータ・ユーザーでも、文字偏重のコンピュータ・ スクリーンにはかなりの疲労感を覚えているものである。ピクトグラムやビデオによるガイダンスは、 コンピュータとのやりとりをもっと迅速に楽しくしてくれるかもしれない。

ユーザー・インターフェイスには、まだまだ未踏の可能性があるのだ。それを、 この会議は認識させてくれた。

 

 

■クレッグ・ マンディ氏のプレゼンテーションの模様はこちらからご覧いただけます

http://www.microsoft.com/whdc/winhec/