2008.12.01ユーザーのアイデアをすくい上げるオープンな方法
ユーザーのコメントや消費者のアイデアを拾い上げるのに腐心している企業は多いだろう。 投書ハガキを製品に同封したり、電話によるカスタマーサービスでクレームも含めたコメントを受け付けたりと、 さまざまな方法を試しているはずだ。
そんな中で、スターバックスとデルがインターネットのSNS的しくみを利用した方法でユーザーのコメントを集めている。 ただのコメント収集と異なるのは、コメントの回りにコミュニティーが形成され、 さらにそれが企業内部のネットワークにも連結していることだ。それぞれに詳細は異なるが、たとえば 「マイ・スターバックスアイデア」 のケースを説明しよう。
マイ・スターバックスアイデアは、 スターバックスのサイトとは別に設けられたご意見受け付けサイトである。コメントを書き込むためには登録(無料)が必要。 登録を済ませて、 スターバックスに対するコメントや意見を書き込む。内容はドリンクの種類、紙コップのデザイン、店構え、 店内でのエクスペリエンスなど何でも構わない。
たとえば現在寄せられているコメントにはこんなものがある。「豆乳ラテに、 軽い風味のライト版を導入してほしい」、「貧乏な学生のためにwifiを無料化してほしい」「地元のスローフードを原料にした食べ物を売ってほしい」 などなど。
コメントを書き込んだ後は、他の人々が寄せたコメントに投票することも可能だ。 コメントやアイデアの面白さに応じてポイントを付ける。ちょうどニュース共有サイトの人気投票のように、 ポイントがたくさん集まれば注目が集まって議論も起こる。その議論がさらにそのアイデアを研ぎすませていくというしくみだ。
面白いのは、こうしたコメントがなおざりにされないことである。 ポイントをたくさん集めた投稿には、スターバックスの担当チームが返事を出す。「現在、この問題に対処すべく取り組んでいます」と。
これまでにこのマイ・スターバックスアイデアのコメントから製品化、 実現化されたものは少なくない。たとえば、iPhoneのユーザーのための無料wifiアクセス、 コーヒーがカバーの穴からこぼれないようにする小さなタブ、スターバックスの売り上げを社会貢献活動へ寄付する 「スターバックス・レッド」などが、その一部である。
アイデアが実現化されてもそれを出したユーザーが報酬を受けることはないが、 ユーザーはこのサイトで議論を盛り上げ、スターバックスに取り上げられ、 ついには自分のアイデアが現実の製品やサービスになるというプロセスを享受することができる。一方スターバックスは、 マーケティングとカスタマーサービスを統合した新手の戦略に出ているわけだ。
マイ・スターバックスアイデアがユニークなのは、 それが内部の社員共有ネットワークにも繋がっていることである。このアイデアサイトを運営しているのはCRM(顧客関係管理)テクノロジー開発会社のセールスフォースだが、 このテクノロジーはひとつのアイデアを核にして異なった部署の社員が意見を取り交わし、 プロジェクトを進めていく過程も担っている。ユーザーや消費者から社員、 そして製品開発までが建設的で透明性のあるひと繋がりのプロセスになっているのだ。
デルは同じような「アイデア・ストーム」を運営している。 コメントの内容はオープンソース情報から操作環境、デルの企業サイト関連までかなり広範に渡っている。デルは一時期、 電話でのカスタマーサービスが幼稚だとテクノロジーおたくたちの不評を買ったが、アイデア・ ストームならばどんなレベルのコメントもうまく受け付けられるはずだ。
そしてもちろん、 このテクノロジーを開発したセールスフォースも独自の「セールスフォース・アイデアエクスチェンジ」を運営して、 CRMのしくみを常にアップグレードするような意見をくれるコミュニティーを醸成している。
ユーザーのコメントの行方を透明にする利点は大きい。 コメントを寄せるユーザーは、少なくともそれがちゃんと受け付けられたことを確認したいだろう。さらには、 社員や他のユーザーによる評価を知りたいだろう。そしてそれが製品化されたりサービスの向上に繋がったりすれば、 大きな心理的な報いを得るのだ。
ユーザーのコメントをおそれる企業も多いかもしれないが、 そんなコメントをクレームと取るか、あるいはアイデアと取るかは、 企業がより上質なコミュニティーを築くことができるかどうかの分かれ道でもある。その意味では、この「アイデア」というメカニズムは、 コメントを自動的に明るく建設的なものに方向転換するしくみでもあるのだ。




