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2009.09.07緊急事態のためのサイトの作り方を学ぶ: CDCの豚インフルエンザ情報

そろそろ秋。南半球へ広がっていた豚インフルエンザが今秋、再び北半球へ戻って、今度はかなりタチの悪いかたちで拡大することが予想されている。

どうすれば予防できるのか、もしかかったらどうするのか。そういった情報はすでにメディアでも溢れているので、もう十分だと思われている方も多いだろう。だが、ひとつたよりになるサイトがあるので、ご紹介しよう。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)のサイトである。

このサイトは、インターネット検索で「豚インフルエンザ(swine flu)」と入力すればトップに表示されるもの。アメリカ、あるいは英語圏では、それだけ多くの人々が信頼し、リンクを張り、ここを訪れているということである。

ちなみに、日本語で同じように検索すると、トップに表示されるのはウィキペディアへのリンクだ。もちろんウィキペディア上の情報の信憑性はかなり高いので、このサイトを読むだけでも知識を得るのに十分だ。とは言え、100%正しいとは言い切れない。本当に信頼できる情報を得るには、ここをスタートにして、さらに別のサイトへ探訪を続けなくては安心できないだろう。

日本語検索では、下の方に厚生労働省のサイトも出てくるが、なぜかH1N1に関する「事務連絡」のレターの写し。一般人にはあまり役立たない。

さらに下の方に、日本のCDCにあたる国立感染症研究センターへのリンクがある。同センターの「パンデミック(H1N1)2009」メインページの難を挙げると、他組織へのリンクがほとんどという点だ。感染症情報センターによる情報、世界保健機関による情報、CDCによる情報、厚生労働省による情報と、数々のリンクが並べられていて、もちろん役には立つ。だが、さまざまな情報を咀嚼した上で、責任を持って一本化した情報を提供してくれるのは一体誰なのだろうという疑問がどうしてもわき上がってくる。ウェブサイトの「たらい回し」は、後々に起こる不都合をあらかじめ責任逃れしているように見えてならないのだ。
そうした目でCDCのサイトを見ると、まず感心するのはその情報の整理の仕方と、CDCが自ら発信している情報が多いことだ。

CDCは多数の疾病に関する情報を掲載しているが、「2009 H1N1」のサイトは、この1ページで豚インフルエンザに関してわれわれが「知るべき情報」はこれらであるということが、一目でわかるような構成になっている。一般情報、グループ別の情報(親、妊婦用、旅行者、企業、身体障害者など)、管理基準、状況アップデートなどの他に、緊急薬剤等の利用承認方法、豚インフルエンザに関するポッドキャストやビデオ(政府高官による質疑応答など)などへのリンクもある。WHO(世界保健機関)など関連サイトへのリンクは、そのうちのひとつにすぎない。

さらに驚いたのは、ソーシャル・メディアへのリンクも設けられていること。豚インフルエンザ・ウィルスの画像の共有サイトへのリンクの他、CDCが設置しているフェイスブック、マイスペース、ツイッターがある。今やアメリカの政府関連機関は、連邦政府、地方政府に関わらず、ソーシャル・メディアも含めたあらゆる手段で情報発信することが求められている。今、アメリカで最もホットな話題は新しい方法で情報開示をする「政府2.0」であるほどだ。CDCも、重要発表をあの手この手で伝達しようとしているわけだ。
インタラクティブなおもしろい仕掛けもある。アメリカ全州の豚インフルエンザの広がり具合、病院を訪れた豚インフルエンザの疑いのある人の数などが地図で表示され、それをさらにクリックするとより詳細にわたった情報にアクセスできるようになっているのだ。

しかもその中には、ウィルス変異がどの程度起こっているのかをテストした結果や、これまでのインフルエンザでの広がりとの比較などがあって、かなり専門的な内容がカバーされている。日本のサイトでは、水平方向に複数のサイトをたらい回しされる感じだったが、ここはどれだけ知識を得たいかによって垂直方向に情報を掘り起こせるようなしくみだ。唯一あればいいのになあと感じたのは、地元のどこでワクチン接種を受けられるのかといった実用的な情報だ。これは地元政府のサイトへアクセスして入手するしかないのだろう。

CDCの豚インフルエンザ情報のサイトは、緊急事態にどんなサイトをつくるべきかについての好例ではないだろうか。やたら関連サイトをクリックさせては、人々のパニック度を高めてしまうだけのことになりかねない。「知るべき情報はこれら」ということを整然とリストアップした上で、知りたいだけ知ることができるという構成は、緊急事態の人々の心理状況をも考慮した優れたサイトなのである。


CDCのサイト:
http://www.cdc.gov/h1n1flu/