米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2012.05.17インターネットの「ピンアップ」が秘める可能性

最近人気のあるウェブサイトには、ひとつ共通した点がある。「ピンアップ」という行為が簡単にできるようになっていることだ。例をふたつ挙げると、自分のお気に入りのモノが写っている画像をカットして貼付けるピンタレストと、さまざまなサイトから抽出されたファッションのアイテムの画像をコーディネーションして、やはりサイトに貼付けるポリヴォアがある。

ピンタレストは、インターネット上のサイトで見つけたものをピンアップする。気になったファッションはもちろんのこと、すてきなヘアスタイル、イメージが広がるインテリア、いつか行きたい町の風景など、分野は何でもかまわない。一方、ポリヴォアはファッションが中心で、ポリヴォアのサイトがいろいろなオンライン・ショップから選んできてストックしているファッション・アイテムの写真から、ジャケットとシャツ、スカート、アクセサリー、靴、かばんなどをコーディネートして、やはりピンアップしておく。そのためのテンプレートもあり、完成したページは、まるでプロが編集したファッション雑誌のようにかっこよく見える。

ピンアップという行為には、興味深いことがたくさんある。まずは、コラージュするという行為。これは、異なったソースから選び出された多彩なものを、その人の趣味や主張によって別の白紙の上に組み合わせて表現することだ。そこには、「引用」、「作り替え」、「表現」といった一連のシナリオと複層的なストーリーがある。

また、ピンアップは「記憶すること」にも結びついている。思いついたアイデアや見かけたイメージの断片をひとつの紙の上に固定させる。メモのようなものなのだが、それが視覚的なので、そこからまたイメージが広がる。そして記憶するのだが、ピンアップはまた暫定的なものでもある。つまり、その時のイメージを固定するが、それは流動的なもので、気が変わったら作り替えてもかまわないし、新しい画像を付け加えたり、アイテムを並べ替えたりして、そのあり方をいつでも変えることができるのだ。

上記ふたつのサイトには、さらにインターネットならではの特徴もある。ひとつは、ピンアップをシェアできること。自分のためだけのピンアップではなくて、他人をシェアし、他人にアピールするためのピンアップなのだ。また、テンプレートで簡単に制作できる点も興味深い。ユーザーが表現するためのツールを多数取り揃えているわけだが、それは表現する力を底上げするようなタイプのもの。その手軽な使い勝手はインターネットでなければ不可能だったものだ。

もうひとつ興味深いのは、これが新しいソーシャル雑誌のような役割を果たす可能性もあるという点だ。すでにポリヴォアは、他のユーザーがコーディネートしている中から気になるアイテムをクリックすると、オンライン・ショップにそのままつながる。これまでは経験を積んだ専門の編集者やっていたことが、ソーシャルに行われるようになり、さらに先の機能性を持っているのだ。

ピンアップという従来からある手順は、インターネット時代、ソーシャル時代に再考すればどうなるのか。その潜在的な可能性をさぐる方法として、このふたつのサイトは特におもしろいのだ。


ピンタレスト http://pinterest.com/
ポリヴォア  http://www.polyvore.com/