米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2012.09.04「ムーブメント・ブランド」と「ムーブメント・マーケティング」について

従来型のマーケティングは本当に機能しなくなった、とハーバード・ビジネス・レビューのブログ・ネットワークである専門家が説いている。

http://blogs.hbr.org/cs/2012/08/marketing_is_dead.html

現在の消費者たちは、広告やマーケティングの受け身的な受信者ではなく、積極的に自分で情報を調べ、知人や家族にアドバイスを求め、世の中で何が評価されているのかを自分で確かめるようになったからだ。その結果、企業のトップもマーケティング担当者が金を使うばかりで、納得できる成果を上げていないことを嘆いているという。イギリスのあるマーケティング会社が昨年調べたところによると、73%のCEO(最高経営責任者)が自社のCMO(最高マーケティング担当者)の技能が不十分で、業績成長に貢献しないと言い、72%は、売上にどう影響するかの説明もないまま予算を要求すると述べ、77%はブランド価値に関するおしゃべりはもうたくさんという気分になっているのだという。

今は、マーケティング担当者の危機的時代だろう。そうした説明の後、この専門家は、いろいろなアドバイスを与えている。昔よく見られたような地域の仲間で組織して、そこへアピールするようなマーケティング方法を復活させよとか、顧客に影響力を持つインフルエンサーを探し出せとか、彼らを金やディスカウントで報いる代わりに、知識を増やしたり、アフィリエーションを増加させたりするような方法で報いろとか、といったことだ。もうひとつ、そのアドバイスで面白いと思ったのは、顧客自身に問題解決に加わってもらえ、というもの。

ここで挙げられている実例は、ティーンエージャーの喫煙をやめさせるために、フロリダ州が採った方法である。同州は、タバコを吸わないティーンエージャーや、吸っているがやめたいと思っているティーンエージャーをグループに組織して、彼らが中心となってワークショップやトレーニングを行い、禁煙Tシャツを売るなどの活動を後押ししたという。それで実際にティーンエージャーの喫煙者が減った。

これが面白いと思ったのは、最近「ムーブメント」について読む機会が多かったからだ。ムーブメントというと、政治的な運動が最初に浮かぶが、このムーブメントの考え方は、これからの企業活動の際にも使えるのではないかという点だ。このティーンエージャーの実例も、多くの人員を巻き込んだムーブメントによって成功しているのではないだろうか。

たとえば、パーパス・ドットコムという企業がある。この企業は、テクノロジーの力を使って社会運動や消費者運動をサポートするようなNPO的活動を行ってよく知られているが、一方で企業に対して、「ムーブメント的ブランド」が確立できるような手助けも行うという。ムーブメント的ブランドというのは、これまでのように企業が一方的に消費者に向かってガミガミと売り込むような商品ではなく、消費者も一緒になって共鳴し、まるで運動のように価値を共有して行う活動のように消費できるブランドや商品を生むという意味だ。

パーパス・ドットコムの場合は、ことに社会変革が必要な領域で起業したり、サービスや商品を生む企業をサポートしたりすることを目的としている。だが、通常の企業でも、意味ある商品やサービスをムーブメント的に広めていく可能性については、一考する必要があるだろう。

そう思っていたら、同じくハーバード・ビジネス・レビューにムーブメントとは何かをわかりやすく説明したブログがあった。

http://blogs.hbr.org/cs/2010/11/the_anatomy_of_a_movement.html

その項目を挙げておこう。
・波のように波及していくこと
・脱中心的だが、組織と価値共有がある
・おしゃべりが持続すること(口コミのような一時的なものではない)
・共鳴する人々が自ずと主唱する
・クリティカルマスの人数が集まる

ソーシャル・ネットワークを駆使してマーケティングする、と言われるとテクニックだけに偏ってしまうが、これを「ムーブメントを起こす」と言い換えるとよくわかる。ただし、ムーブメントとして共有されるだけの「意味ある価値」があることが最低条件ではある。