米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2012.10.12いらない物を売買し、処理する、もうひとつの市場の可能性

アメリカに住んでいると、中古品が取引されるさまざま場があるのに感心する。小さなものから大きなものまで、そして古い物から新しい物まで、売る人買う人の財布や時間の都合に合わせた方法が多様にそろっているのである。

現在、中古品取引の場としてもっとも知られているのは「クレッグズ・リスト」だろう。日本ではあまり知られていないが、アメリカでは誰でも知っている人気のサービスだ。
クレッグズ・リストは、インターネットに売りたい物を写真付きで掲載しておけば、買いたい人がコンタクトを取ってきて、その後は互いにやりとりしたり、実際に会ったりして物とお金を交換するような、比較的リアルな関係性の中で取引する場である。そのため、取引はローカルなものも多い。

イーベイという同じようなサービスもあるが、こちらは遠くの売り手とコンタクトを取って、支払い保証サービスのようなシステムを利用して売買する。買った物も、郵送などの手段で送られてくる方法だ。クレッグズ・リストもイーベイも、家具から小物、洋服、コンピュータ関連製品まで、取引される物はいろいろだ。

インターネットを離れると、ガレージセールがある。家を片付けた際に山積みになったものを、自宅のドライブウェイで売るというものだ。週末に住宅地をドライブしていると、「○○通り○番地でガレージセール中!」などという看板がよく立っていて、興味を持った人が立ち寄ったりする。ガレージセールは、だいたいがガラクタものばかりなのだが、それをまた買う人々がいる。古くなった工具や古くさい飾り物など。持ち主が変われば、そうした物も新しい息吹を与えられることもある。工具を壁の飾り物にしたり、飾り物を別の物に作り替えたりすることが好きな人々もいるのだ。ガラクタなので、ガレージセールで売っているものはだいたいがメチャ安である。

ちょっと高価なものならば、コンサインメント(委託販売)がある。ブランド物の服や小物、あるいは高級な家具、食器などは、コンサインメント専門店へ持って行けば、何ヶ月か預かってくれ、売れれば何割かの手数料を差し引いた残額をくれる。ただ、コンサインメント専門店はお目が高いので、ブランド物も何シーズンも過ぎているとダメだし、店の趣味に合っていなければ取り扱ってもらえない。また、手数料が4割など、けっこう高めなのも売り手としては不満が残るかもしれない。

エステートセールという場もある。これはたいてい、亡くなったお年寄りの持ち物を売る場で、その住まいで行われることが多い。レベルはピンからキリまであるが、いい物を持っていた家ならば、時にはびっくりするような家具や食器がお手頃な値段で手に入る。そういうセールは、骨董価値のあるものを先にアンティーク屋に売った後に開かれていることが多く、骨董品とまではいかないが、それでもけっこう価値があるといったタイプのものが見つかる。日本流に言えば、知人でもない亡くなった人の持物などちょっと......、というところだが、アメリカ人はそんな品々も面白がって買うのである。

売り買いの手間を省きたければ、寄付という方法もある。アメリカには、ホームレス、障害者、貧困家庭などの支援をしているNPOがたくさんあって、そうした組織がいらなくなったものを引き取って、配ったり売ったりするのである。たとえば、グッドウィルという組織は方々に店を持っており、そこへ不要品を持ち込む。キッチン用品、洋服、靴、オフィス用品など、だいたい何でも引き取ってくれる。品物はそこで仕分けされ、しばらくすると実に安い値札がつけられて店頭に並ぶ。その売上は、ホームレスの職業訓練などの目的に使われる。

最近は、数ヶ月ごとに日を決めてトラックで不要品を引き取りにくる組織もあれば、ショッピングセンターに大きな容器を据えて、そこへいらないものを入れられるようにしている組織もある。不要品の処理が便利になった感じだ。このように不要品市場が充実しているので、罪悪感を感じながら捨てたりする必要もなく、もったいないけれども、もう飽きてしまったようなものを、みすみす無駄にすることもない。何よりも、その品物の価値や自分の時間の有無によって、中古品や不要品をどう処理するかをいろいろな選択肢から選べるのがいい。中古品に対する否定的な偏見がないことも、この市場の人気に手伝っているだろう。だが反面、いかようにも処理できるため、あまり考えもせずに買い物をする癖をアメリカ人につけてしまっているという欠点があることも確かだ。

いずれにしても、この「負の市場」とでも呼ぶべき不要品取引は、何かしら面白い可能性の空間のようにも見える。それでも今はまだ何かと不便だったり、貧乏臭い匂いがつきまとっていたりするが、こうしたことがうまく払拭してスマートな市場に仕立て上げられれば、もっと未知のビジネスが生まれる。またこれは「物」だけではなく、「人」や「技能」にあてはめてみてもこれまでとは違った市場を作れるヒントになるのではないかと思うのだ。