米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2013.01.152012のクリスマス商戦の工夫のいろいろ

昨年末のクリスマス、アメリカはどこを見てもクリスマスのショッピングに誘う広告で溢れていた。不景気から完全に回復していないこともあって、どの店もあの手この手で客の関心を惹こうと必死であった。いろいろなやり方があるものだと感心するが、そのうちのいくつかをご紹介しよう。

まず、いつもおもしろいことを企画することで知られるデパート・チェーンのターゲットは、昨年高級デパートのニーマン・マーカスと組んで年末商戦に向けた商品開発を行った。ターゲットはこれまでも高級ブランドのミッソーニと組んで、ミッソーニ・デザインの服や家庭製品を限定販売で発表したりしてきた。人々の関心をそそったのは、安物売りで知られるターゲットがイタリアの高級ブランドと組んだこと、そしてその結果、あこがれのミッソーニ製品をものすごい安値で買えることだった。この合同企画コラボ製品は1日ほどですっかり売り切れてしまった。ターゲットは、それ以外にもマルベリーやジェイソン・ウーなどとのコラボ製品も出していて、その度に話題を呼んできた。オバマ夫人もそのターゲットのジェイソン・ウーの安物ワンピースを着ていたほどだ。

今回のニーマン・マーカスとのコラボは、安物デパートと高級デパートのコラボということになる。ニーマン・マーカスで人気のある複数ブランドのデザイナーが商品のデザインを行うという趣向である。トリー・バーチのランチボックスと水筒、オスカー・デ・ラ・レンタのキャンバス・バッグやペット用ボウル、プロエンザ・スクーラーのiPadケース、ダイアン・フォン・ファーステンバーグのヨガマットなどである。衣料品あり家庭用品あり文房具ありとバラエティーに富んでいて、全部で60製品くらいある。支離滅裂なラインナップに見えるのだが、今や飽き症になった消費者にはこの方法がアピールするのだろうと思う。

また、高級ブランドを安く売ることでイメージアップできるのはターゲットの方だろうが、ニーマン・マーカスや高級ブランド側も、限定的にではあっても、安い値段の商品が出せるブランドというカジュアルなイメージ作りができる。これまでならば安物を売るなど「イメージが壊れる」と思われただろうが、今は逆だ。フレキシブルで若いブランドというメッセージを送れるからだ。また、安い製品開発の方法論を、この際ターゲットから学んでいることだと思う。

さて、クリスマス商戦ではこれ以外に「時間差攻撃」という手も出てきた。たとえば、もっと安売りデパート・チェーンのウォルマートは、感謝祭(11月第4木曜日)の翌日、ブラックフライデーと呼ばれる1年で最大のショッピングとバーゲンの日に、この時間差攻撃作戦を使った。普通は一定の時間に開店して、そのまま閉店時間まで店を開けたままにするのだが、その日は一旦閉店し、また開店するという方法を何度か繰り返した。その都度、在庫品を店内に出し、客の興奮を保ち続けるようにしたようである。

また、時間差攻撃ということで言えば、「アドベント・カレンダー」もよく使われている。アドベント・カレンダーというのは、キリストの降臨(アドベント)までを指折り数えるためのカレンダーで、12月1日から25日分で構成されている。プレゼントなどで、立体的なカレンダーの中に1つずつ小さなチョコレートなどが入っているといった趣向のあるものもよく出ている。このアドベント・カレンダーにちなんで、日本風に言えば「日替わり」で新しい商品のバーゲンを提供するのだ。ただし、アドベント・カレンダーを利用する際のコツは、毎日待ちわびるのに値するような「いいもの」を揃えなければならないということだ。ちょうど日本の正月の福袋も縁起担ぎの福々しい品揃えでいけないのと同じく、クリスマスまでの楽しい日々の気分を決して害しないような、「アドベント」の名を汚さないものでなければ、かえってブランドのイメージを下げてしまう。ただのバーゲンではない、おしゃれや大切さを表現するような工夫が必要なのである。

ショッピングセンター内に、臨時ラウンジを設けるという趣向も出てきた。たとえば、クレジットカードの利用者を対象として、ショッピングセンター内に空港ラウンジのような場所を設け、ソファやローテーブルを置き、飲み物や軽食を取れるようにする。年末のショッピングはみんなへのプレゼントを買うために1日仕事ともなる上、アメリカのショッピングモールには落ち着けるような喫茶店があまりない。少しでも優雅に過ごしたい客にアピールし、せいぜいクレジットカードも利用してもらおうという魂胆だろう。

ショッピングに楽しみやワクワク感、優雅さなどいろいろなものを盛り込んで客寄せし、この不景気を乗り越えたいと、店は一筋縄ではいかない時代に取り組んでいる。