米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2013.03.12包装とデータについて

わが家ではいろいろなものをオンラインで注文する。アマゾンからは書籍や電気機器、ドラッグストアー・ドットコムからは洗剤や日用品。その他にも化粧品、靴、洋服。また、誰かへのプレゼントやオークションで陶器などもオンラインで買う。以前はこれほどたくさんのものをオンライン・ショッピングすることはなかったが、一度慣れてしまうとこの便利さは代えがたい。時間、手間もカットされる。車社会のアメリカではどこへ出かけるにも時間がかかるので、これは何とも助かる。万が一洋服のサイズが合わなかったりしても、返品は簡単だ。

そうするうちに気になってきたのが、家に積もり上がる段ボール箱である。どのオンラインショップも軽くて無駄のない段ボールを使っているとわかるが、どうしてもかさばってくる。捨てるもの、取っておいて後に使えそうなものを分けたりしてみるものの、これはどうにかならないものかと考えてしまう。オンラインショッピンングの欠点を上げるとすれば、段ボールが真っ先に来るだろう。

そんなことを考えていたら、アマゾンからメールが届いた。「最近ご注文になった品物の、包装についてご意見をお聞かせ下さい」という。さっそくリンクをクリックして自分のアカウントに入ると、数週間前に届いたCDと靴の画像が載っている。CDについてはどんな包装だったか覚えていないので、靴の方をクリックしてフィードバック作業を始めた。

フィードバックは4段階からなるもので、最初は期待通りの時間内に配送されたかどうか。ふたつめはアマゾン側の包装について、3つめは製品側の包装について。そして最後がそれ以外お気づきのご意見を下さい。場合によっては、写真も貼付して下さいというものだ。これまでもアマゾンでいろいろ買い物をしているが、この手のフィードバックを求められたのは今回が初めてである。アマゾン側の包装については、製品がちゃんと保護できていたかを5つ星で評価し、さらに配送用の箱のサイズについて小さ過ぎたか、大きすぎなかったかと問う。製品側の包装については、開けやすかったかどうかを聞いている。私が注文した靴の包装についてはすべて満足だったが、最後のところで意見を書き込んだ。アマゾンの箱の中に製品の箱が入っていて、二重包装になっているのが無駄ではないかと指摘したのだ。注文したのはスニーカーなので、余程のことがないかぎり壊れたりしない。箱を二重にして配送する必要はないだろう。

実は、アメリカのアマゾンは「イライラしない包装」というサービスを2008年から設けている。これは、おもちゃや電気製品などの包装を簡易にして、空けやすくするもの。包装材料が少なくてすむので、環境にもよいという判断である。というのも、日本ではていねい過ぎる過剰包装が問題になるが、アメリカでも別の理由による過剰包装がある。それは、店頭や配送過程での盗みを防止するための過剰包装だ。小さなものでも固いプラスティックで包み、さらにそれをサイズの大きな段ボール紙のようなものに固定する。そのプラスティックは固く接着材もかなりしっかりしているので、簡単には空けられないのだ。中には、さらに針金で製品が固定されていることもある。ハサミを使ったりして空けると、プラスティックで手をけがしてしまうこともある。

アマゾンの「イライラしない包装」は、ナイフやカッターなしに製品が空けられるようになっているというもの。それは、どちらかと言うと、アマゾン側ではなくメーカー側の包装を簡易化しようということだ。したがって、メーカーがアマゾンとの合意のもとに行っているキャンペーンである。アマゾンでは現在7万製品ほどがこの「イライラしない包装」の対象になっているという。ユーザーは、該当製品であれば「イライラしない包装」を選択してチェックアウトする。これを選ばない場合は、「通常の小売り向け包装」となる。「イライラしない包装」の製品を集めたページもあるので、そこから選ぶこともできる。食品ではコーヒーのカートリッジ、電気製品ではケーブルやメモリー、おもちゃではぬいぐるみやプラスティック製のもの、そして日用品ではジャム用ガラス瓶やコーヒーメーカーなどが人気製品のようだ。

こうして考えてみると、私のところに来たアマゾンのフィードバック・メールは、ひとつひとつの製品の包装について配送結果を確認してデータを取っているものと思われる。実際に壊れないで到着したか、ユーザーが包装を開く際の簡易度はどの程度だったか、そしてユーザーの包装に対する見方はどうかといったことが、この簡単なフィードバックですべてわかる。それも製品ごとに、だ。アマゾンの「イライラしない包装」ページでは、「これを浸透させるには、長い時間がかかるはずです」と書かれているのだが、同社はここへ来て実際のユーザーからのフィードバックを数学的なデータにしようとしているのだろう。そして、おそらくそれをメーカーとの話し合いに使うのだろう。

とかく包装についての見方は、「過剰すぎる」とか「箱がつぶれていた」といったことばによる意見や文句に留まりがちだ。それをデータ化する。アマゾンにはご存知のように出品者への評価というフィードバックもあるが、そちらはもっとソフトなもの。だが、この包装に関するフィードバックはハードなデータとして収集されているのだろう。毎日膨大な数の配送を行うアマゾンだからこそ、それがまた意味を持つ。私のクリックが、メーカーの包装方法を変えるような力を持つのだろうと、ちょっとエンパワーされた気分にもなったのである。