米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2013.05.29宿泊スタイルの選択肢が広がった、昨今の旅行

最近のアメリカでは、旅行に行った時にどこに泊まろうかと考える際の選択肢が非常に増えた。ホテルの数や種類が増えただけではない。いろいろなタイプの宿泊スタイルが可能になっているのだ。そうした多様化を先導しているのは、「シェア・エコノミー」的な思想で展開されているシェア型の民宿である。日本にも少しずつ広まっているようだが、その代表格はエアービーアンドビー(Airbnb)というサービスである。

エアービーアンドビーは、自宅の余っている部屋やセカンドハウスとして持っているアパートなどを旅行者に貸し出すのを仲介する。旅行者の方は、目的地でホテルよりも安く、あるいはまるでそこに住んでいるかのように感じられる環境で滞在することができるという利点がある。たとえば、サンフランシスコで泊まる場所を探そうとすると、「サンフランシスコ好み」「絶景」「ツーリスト向け」「いいレストランに近い場所」「静かなところ」「ショッピングに最適」「交通の便がいい」「アーティスティックな場所」などのカテゴリーに分かれた4000件近い場所がある。サイトから滞在日や条件を入力して、自分の好みや目的に合ったところを選べばいい。

民宿と言っても、ほとんどの場合家主はノータッチで、借り部屋や借家をするのに似ている。ホテルと違うのは、キッチンが付いているので料理もできるし、家の場合ならば、リビングルームや庭などもあったりして、まるで自宅にいるような気分でくつろげることだ。だいたいホテルよりも宿泊費が安く設定されているのも特徴で、特に若い旅行者には人気だ。

エアービーアンドビーは、サンフランシスコに限らず全米の都市、そしてヨーロッパやアジアにもサービスを広げているのだが、こうしたサービスはホテルのようなありきたりの部屋でない、個性的な場所に宿泊できるのが魅力である。広く見渡せば、ロッジのような家、大型テントのような家、木の上に建てられたツリーハウスなど文字通りユニークな家もある。また、フランク・ロイド・ライトなど、有名な建築家が設計した家もリストに上がっていたりすることもある。

これまでホテルと言えば、高級ホテル、ビジネス・ホテル、デザイナー・ホテルなどいくつかのパターンはあったが、基本的にはバスルーム付きベッドルームという部屋であり、そこにレストランなどの施設があるというサービスの構成は同じだ。それが、エアービーアンドビーのような仲介サービスが登場することによって、想像できないほどに宿泊の選択肢が増えたのである。どんな気分になりたいかに合わせて宿泊場所を選べるのだ。

ただし、ホテル業界も黙って見ているわけではない。最近の新手のホテルは、こちらもなかなかユニークだ。たとえば、スターウッドホテルに加わった新しいブランド「Aloft」は、若者を対象にしたホテル。部屋のデザインは非常にシンプルで無駄がなく、その分宿泊料は安い。レストランといった重苦しいものはなく、バーがあったり、テイクアウト・コーナーがあったりするだけ。「あとは思い通りに好きにやって下さい」という感じで、型にはめられるのが苦手な昨今の若者には、ぴったりなアプローチ。なんとなくブラブラとくつろげるような共同スペースもある。

また同じくスターウッドホテルの「エレメント」は、「健康」や「グリーン」を中核にして構成されたホテルだ。自然光がさんさんと入る室内で、照明も目に穏やかにデザインされ、シャワーはスパ仕様のマッサージ付きだったりする。小さなキッチンや料理道具などもついていて、不健康な外食だけに頼らなくてもいいように考えられている。「リストアー(回復)や「リニューアル(再生)といったことばをキーワードにしているホテルだ。

目的や財布の具合だけでなく、その時の気分によって泊まる場所を選べる。これは、旅行にとっては大きな変化と言える。