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2007.07.25情報と人、空間をつなぐコミュニケーションデザイン

misawa-san  MT-planning

 インタラクションデザイナー・MT-planning代表

 三澤純子氏

 

 

 

人と情報と空間の相互作用を生み出すデザインに注目し、

情報機器の開発や空間づくりの活動をされている

インタラクションデザイナーの三澤純子さん。

日々革新する技術と葛藤しながら、最適な情報の伝え方と、

そこから生まれるより良いコミュニケーションスタイルを提案しておられます。

そんな三澤さんにとってのエクスペリエンスデザインについてお話を伺いました。

 

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情報を囲む新しいコミュニケーションスタイル

―――三澤さんの現在の活動内容について、具体的にどのようなことをされているのか教えていただけますか。

人と情報と空間の関係を考えるインタラクションデザインを仕事の中核に置いて、 コンピュータや映像機器のソフトとハード面の開発を中心に活動しています。主に『Media Table』 というテーブル型の情報機器を制作していて、情報を囲む新しいコミュニケーションスタイルというかたちで提案しています。 コンピュータと映像機器、タッチパネルが装備されているテーブル型の映像装置なのですが、コンテンツ制作や、 それが使われる空間の提案を行なって、実際に制作をし、空間づくりをするということをしています。 『Media Table』 は博物館やショールーム、地域の情報センターでよく活用していただいていますね。 上から俯瞰して見るタイプなので地域の情報コンテンツに向いています。情報端末に関しては、 医療施設で患者さんに提供する情報をブログ化して表示する端末やインターネットの仕組みをつくったり、 ペットのライフスタイルを調べる問診クイズに答えていくと適切なサプリメントが表示される情報端末を制作したりと、 色々な分野を手がけています。コミュニケーションスタイルを変えるという意味では、 企業向けのビジネスプレゼンテーションのコンテンツ制作や、 イメージをわかりやすく伝える建築プレゼンテーションなどのデザイン、制作もしています。

 

膨大な情報を整理してあげることも仕事の一つです。多くの情報の中から何を見せるかということを選んでいくのですが、 そのときに重要なのがヒアリング。お客様から課題となる事柄についてヒアリングし、その中から、重要な項目をひろっていきます。 それを一度こちらで整理して組み立ててから提案し、クライアントとのディスカッションの中で方向性や情報を絞っていきます。 例えば博物館の場合、一般向けや子供向けにわかりやすいように、情報を噛み砕いて伝えてあげるように努めます。 コンテンツの制作と情報の新しい伝え方の模索、二つのことに取り組んでいるので、情報の整理に関しては、現場に足を運んだり、 自分で勉強をしながら常にやらなければいけない部分ですね。

思い出写真館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人がどのように考えて行動するのかを学ぶ

人間工学の視点が基盤

―――人と情報と空間の関係について考え、デザインをされるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

中学生の頃に、初めてコンピュータを見てすごいと思ったことが一番最初のきっかけです。情報があって、 それを人へ伝えるためにコンピュータがカチャカチャと動いていて。そのときは漠然とそういう仕事に関わりたいと思いました。 第二のきっかけは大学へ進学するときに、人間工学を専攻したこと。人間工学は人がどのように考えて行動するのかということを学べると知って、 人と空間の関係を考えるという視点が面白いと考えました。当時は人間工学を学べる大学が少なくて、 私の学年で女子学生の卒業生はたったの2名だったと思います。なので、 色々な企業の商品開発部門の方から女性の人間工学者が欲しいとよく声がかかりました。今は日本においても、 大学のカリキュラムにどんどん組み込まれるようになってきていますが、 イギリスでは小学校からデザインや人間工学について教科書に取り入れていたりするので、もっと早くから勉強をして、 そういう視点で人や空間、情報の関係を考える訓練ができる環境が整うと良いと思いますね。

 

その後、NECデザインという会社に人間工学アナリストとして採用されました。当時は、 ワードプロセッサーやファックス、コンピュータが進化して、短時間にどんどん技術が革新され、 次々と商品がリリースされるという時代でした。デザインのノウハウや技術的なこともそこで吸収したんですね。 その頃からコンピュータなどの技術が進化したらどうなるだろうというシナリオをずっと描き続けてきました。

 

 

技術革新と使い手の橋渡し的存在

―――非常に専門的な技術を必要とする分野ですが、 アイデアやイメージを実現させていく上で何か意識していることはありますか。

技術的な部分に関しては、こういうものがあったらいいなということを、いつも考えたり、思いついたりしている中で、 それを実現するためにはどうしたらいいかということを常に意識しています。そこにフィットする情報があれば調べたり、人に会ったり、 つくってみたりということをやっています。

大抵技術よりもイメージの方が先行するので、 自分が描いているイメージを実現するために突破しなければいけない技術的なハードルがあったりします。 『Media Table』 は構想初期の段階ではまさにそんな感じで、みんな想像もつきませんでした。でもそこを描いていかないといけないので、 エンジニアの方たちと話をしながら前に進んできました。デザイナーよりエンジニアの方がよっぽどクリエイティブだと思います。 少し前はコンピュータはすごく高いものだったけれど、今では携帯の中にコンピュータが入っているわけですよね、 10年前なんて持っている人もそんなにいなかったでしょう。ハードウェア、ソフトウェア、 システムのエンジニアの方たちが今の時代を作っているんですよね。だから、 コンピュータとかインターネットの通信の技術という意味でいうと、 デザイナーはもっと考えなきゃいけないことがたくさんあると思います。 エンジニアの方がもっと先を見てそれを実現するために色々なことをしていると思うので。

 

一方で私たちは、エンジニアの方たちと持っているノウハウが違って、絵に描いたり、イメージで伝えて行く方法があるので、 その部分で彼らをお手伝いすることができますし、目の前のことに集中して今自分たちが何をやっているか課題を見失ってしまうこともあるので、 その場合は、その技術が描かれて行った先にユーザの方々がどうやって使っているのか、イメージを伝えてあげると、 その方向に向かって収束していくことができると思います。エクスペリエンスデザインそのものだと思うんですけど、 自分たちが作っている技術を最終的にエンドユーザさんがどう使うかという部分のブリッジになるんですね。

トヨタ展示

 

 

 

 

 

 

 

 

使い手がどういう気持ちになるのか、

そのためには何が必要なのか 「シナリオ」を描く

―――三澤さんにとってのエクスペリエンスデザインとは何だと思いますか。

自分たちが提供しているものは、ただ単にデザインされてパッケージになっているものではなくて、 人が関与することでどのようになるのかということを考える世界なので、その点ではものを作るにしても、コンテンツをつくるにしても、 一連のシナリオを通して、最終的に使う人たちが、 どのようにして、どんな気持ちになれるかという点と、 そのためには何が必要なのかという視点を大切にしたデザインをすることですね。 使っている人がより楽しくなるように、より嬉しくなるようにということをいつも考えています。そのときに、どのような空間に、 どのようなコンテンツがあると良いのかという「シナリオ」を描くんです。商品企画をする場合は特にそうですが、こんな場所に、 こんな人がいたらどうなるんだろうという想定がたくさんあるんですよ。 そこの部分をクライアントと共有しながらフィルターにかけて絞り込んで作っていくという仕事の進め方をしています。

 

 

情報の伝え方には色々なかたちがある

―――これまでに手がけた代表作品について紹介していただけますか。

Media Table』 を中心に活動していますが、それ以外に取り組んでいることとして、インテリアの布地屋さんとコラボレートした 『Lumi Furniture』 という光の家具シリーズを展開しています。布地とLEDの新しい使い方の提案として、 デザインコンペで優秀賞をいただきました。糸をつむぐように光をつむぐというコンセプトで、布地を幾重にも重ね、 そこにLEDの光を融合させることで、 それぞれ単体では見えなかった光のラインが見えてきて、布地の新しい表情が出てきます。LEDは人に情報を伝えるものなので、 人と情報を伝え合うというところでのデバイスとしてこういうものがあってもいいんじゃないかなと思いました。 モニターというものだけじゃなく、情報って色んな形の伝え方があると思うので、この光の点滅とか、光り具合とか色味、 そういうふわふわっとしたところを色々と表現できるので、使う人が光に癒されたり、 光を抱きしめて気持ちいいと感じたりするのではないかと思って。そういった部分を探っていきたいなと思って展開しています。  

Lumiファニチャー2

 

 

 

 

 

 

 

 

トヨタ博物館に提案した「思い出写真館」というサイトもいい企画ではないかと思います。車と自分、 家族と共に映っている写真にコメントを添えて送っていただく投稿サイトを作りました。車を通した家族の歴史が写真の中に描かれていて、 車がその後どのように使われていったのかすごくよく見えたんですね。車はプロダクトとしてデザインされ、作られたのですが、 それが誰かの手に渡ってからどのように使われて、 まわりの人たちがそのものを通してどういう風になっていったのかということを見る良い機会になりました。 写真ってすごく色んなことを語ってくれるので、生活自体が見えてきたりと、思っていた以上にさまざまな一つ一つの物語が見えてきたんですね。 エクスペリエンスデザインの手法的にも「写真」は今後面白いものが見えそうかなという点で、 この企画を通して今後改めて考えていきたいことがたくさん出てきました。

メディアテーブル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人、情報、空間の関係のバランスの取り方を大切にしたい

―――インタラクションデザインを通して今後挑戦してみたいことはありますか。

これまでは部分的に携わって作ることが多かったのですが、今後はもっと広い範囲でつくり込んでいく空間を手がけたいと思っています。 『Media Table』 自体はインターネットも進化してスムーズに動くようになってきて、マシン自体の性能もよくなって、これからが本番であって、 今までは導入期だったのかなと感じています。マイクロソフトもテーブル型の映像装置を作っていて、今年 『Surface』 という製品をリリースすると発表していますし、テーブル型の情報機器の市場が広がる可能性を感じています。 コミュニケーションをしていく上で、すごく素敵なコミュニケーションスタイルをつくり出せるものなので、 今後改めて注力していきたいです。特にレストランに導入すると面白いのではないかと考えています。 最近は居酒屋さんのオーダー端末も出てきて、そういった点に注目しているんです。今後はオーダーをするだけではなく、 広告的な使い方をしたり、会話を楽しむときに自分の見せたい情報を見せたり、さまざまな情報提供の仕方があると思うんです。 ただ、結局人と人が対面してコミュニケーションをとることが一番大切にしたいこととしてあるので、 情報機器はレストランのおもてなしの一つとして存在するサポート的役割であることが重要だと思っています。 最終的にはそういった人と情報と空間の関係のバランスの取り方を大切にした空間づくりがしたいです。

mediatable02修正

 

 

 

 

 

 

 

 

三澤さんおすすめのエクスペリエンスデザインツール

―――三澤さんおすすめの、 エクスペリエンスデザインスポットまたはプロダクトなどがありましたら教えて下さい。

コンピュータやインターネットというプロダクトやサービス自体が、 まさにものすごいエクスペリエンスデザインなのではなかろうかと思っています。そういうものがある時代となかった時代では、 明らかにライフスタイルに影響が出ていますよね。今はワールドワイドに世界の情報がすぐに入ってくるわけで、 自分の知りたいことを簡単に知ることができる。それがすごいことだと思うんですよね。携帯も、 今では持っていないと落ち着かなくなってしまうくらいライフスタイルに浸透してきていますよね。 今後改良していくべき課題もまだまだあると思いますが、私たちに色々な体験を与えてくれているんです。

 

―――ありがとうございました。

 

 

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三澤純子氏プロフィール

人間工学を専攻し、NECにてプロダクトデザインなどを経験。

2001年     (有)エム・ティ・プランニングを設立。

Media Table」 などのデザイン・プロデュース、

地域情報やビジネスプレゼンテーションなどの制作を行なう。

2003年より子育て開始。

MT-planning HP: http://www.mt-planning.com/

トヨタ博物館「思い出写真館」 HP: http://www.tam-web.net

Lumi furniture HP:  http://www.lumi-furniture.com/

 

[賞歴]

2006年 “WEB Designing”  Most Impressive Website2006 入賞(CGM Prize

2005年  Interior Trend Show JAPANTEX2005インテリアデザインコンペ優秀賞

2004年     青山デザインアワード入賞

        アカリ・イマージュ入選

2001年  日本ソフトウェア科学会WISS2001対話賞

2000年  グッドデザイン特別賞

1999年  ID Magazine1999コンセプト部門優秀賞