デザインテクノロジーの最前線 - 桐山孝司

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2013.05.09徳島LEDアートフェスティバルの活況

先日、徳島LEDアートフェスティバル2013に行く機会があった。徳島市の中心にある公園や橋、商店街などに分散する形で、LEDを使った約40点の作品が展示されている。屋外の作品が多く、公園や街を散歩するつもりで見て回れるようになっている。開会前日から行ったこともあり、現場で制作者や運営ボランティアと立ち話ができるような親しみやすい雰囲気であった。

徳島市の地形が水に恵まれていることと、水に反射するLEDの光が印象的なこともあり、フェスティバルでは水辺の作品が多い。「光のマトリックス-白色LEDによるオペレッタ」(ミシャ・クバル)、「虹のラクーン」(たほりつこ)、「SORAとMIZU」(逢坂卓郎)はいずれも、市内を流れる新町川にかかる橋を使ったイルミネーションの作品である。また「ナイトクルージング-光の航跡」(高橋匡太)は橋の下を通るモーターボートの航跡をLEDでイルミネートする作品である。イルミネーションはすでにある物を生かす方向に働くことから、これらの作品がうまく街の一部になっているように思えた。

「Another Moon Tokushima」(アトリエオモヤ)は、公園の池の底に多数のLEDを敷設して、直径10mの大きな円盤を形作っている。円盤には白色と電球色のLEDで月の表面の模様が描かれており、点灯を制御して月の満ち欠けを作り出している。水面がさざ波立つと、水底のLEDの光が複雑に混ざって美しい。他にも風でモビール構造が動くとそれにつれて色が変わる「Lightflow Structure」(武藤努)や、樹齢600年のクスの樹の洞から光が溢れでてくる「ゆうきがあれば見られる木」(山本明弥香)など、屋外展示らしく自然とのつながりを思わせる作品が多い。多くがコンペティションで選ばれた作品であり、LEDが一列に並んだスキャンヘッドの前に立つと全身のシルエットがスキャニングされる「A Scanner Darkly」(井上泰一)のように出ているアイディアも豊富であった。

全国の地域フェスティバルの中でも、徳島LEDフェスティバルは特定の技術を前面に出している点でユニークである。徳島には青色LEDの実用化で知られる日亜化学工業があり、LED王国として地域ブランドの確立にも力を入れている。徳島LEDアートフェスティバルも、LEDに広汎な応用の場があること、徳島にLED産業が集積していることをアピールするのに貢献している。LEDは省電力、長寿命、コンパクトなど長所が多く、直流なのでコンピュータ制御もしやすい。自然な色に見える演色性の高い製品も出て来て、ここ数年での家庭への普及も著しい。公共的な展示での利用でも、紫外線や赤外線を出さないこと、サイズを小さくしやすいので複数の灯体を組み合わせてライティングしやすいことなどのメリットがある。我々も少し前に、神奈川県立歴史博物館と相模原市立博物館で行われた勝坂縄文展のLED照明を担当する機会があった。土器の文様や顔を形どった立体的な把手などを見せる時、天井からの照明だけでは単調になり影になる部分も多い。それを補うように小型のLED照明で必要な部分に光を当てることが効果的であった。特に土器に埋まったドングリの跡や、土器を作った縄文人の指紋の跡など、1センチほどの範囲にスポットを当てる場合にも近くに寄れることは有効であった。配置が工夫しやすくなることで、展示空間の作り方も変化しそうである。

越後妻有アートトリエンナーレと瀬戸内国際芸術祭は地域名を冠したアートイベントで、いずれも北川フラム氏のディレクションで大きく展開した。徳島LEDアートフェスティバルも同氏がスーパーバイザーとして関わり、今後も3年ごとのトリエンナーレとして続いていくそうである。行政主導の企画は往々にして制作者の個別性に対応することが難しいが、プロデューサーが作品の企画段階から関わることで相互のメリットが大きいようである。2012年中にHOP、STEPとして市民を招いたワークショップを行うなど、今回のフェスティバルへの準備ステージを設けていることも一回限りのイベントにしない工夫といえる。LEDという発展性のある技術を核として、それを生かす持続的なフェスティバルを運営する姿勢も参考にしたい。


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アトリエオモヤ「Another Moon Tokushima」。徳島LEDアートフェスティバル2013より(2013年4月29日まで)。