2006.08.31テロ対策に見る人の見極め方
ロンドン空港でアメリカ行きの飛行機をねらったテロ計画が発覚して以降、世界中の空港がてんやわんやの騒ぎになっている。液状の物質を機内に持ち込めなくなったため、ミネラルウォーターやソフトドリンクはもちろんのこと、歯磨き、化粧品など、ありとあらゆるものが手荷物から禁止されている。セキュリティー・チェックでは、かばんからドリンクやチューブを取り出す人々の混雑、入念なボディ・チェックに列をなす人々などなど、これまでにも増してセキュリティー・プロセスののろさに乗客のイライラが募っている。
すでに各地の空港では、手荷物のハンドルなどを拭き取ってそこに付着した爆発物の粉末を探知する装置が使われているが、現在世界中のテクノロジー会社は荷物をスキャンしただけで液状の爆発物を探知するシステムを開発中で、こうした機械による探知システムはどんどん精度を増していくだろう。問題は、手荷物をすべて透視されるというプライバシーの問題。手荷物だけではなく身体まで透けて見られるため、その程合いが難しいという点である。
ところが、こうしたテクノロジー一辺倒の話題がメディアを賑わせている中で、実にローテクな危険人物感知システムが注目を集めている。この場合「システム」と言っても主体はマシーンではない。人間の見る目だ。
テキサスの空港では、乗客が空港に入ってきたところから、あやしい動き、こわばった身体、落ち着きのない表情などをモニターする特別の係員を配置している。一人の係員が要注意人物をマークすると、乗客が移動するのに従って数人の係員が各持ち場からさらにモニターし、やはりあやしいとなればセキュリティー・ポイント付近で警察官が口頭で質問をするという手順になるという。
まだテロリストは見つかっていないが、この方法によって偽造パスポート保持者、盗品持ち込み、手配中の容疑者などが捕まっているという。この空港では、セキュリティーのスキャナー付近での係員や時間の集中を、こうしたポイントへ分散させることによって、セキュリティー・プロセスを時間と成果両方で格段に向上させているという。
コンピュータの向こうを張るかのようなこのローテクな監視方法は、実はテロ事件に慣れたイスラエルの空港でのやり方を踏襲したものだという。あやしい人物かどうかを見極めるポイントはいくつかある。ポケットに何度も手をやる、さかんに汗をかく、視線に落ち着きがないといったような身体的な動きから、怒りの表情、強い意志の表情などが顔に現れていることなども含まれる。
だが極めつけは、対話だという。それもごく日常的な会話。「昨夜のレッドソックスの試合はすごかったねえ。観た?」といったような質問を、野球試合も行われていない翌日に投げかけたりする。リラックスしている乗客ならば「観てないなあ」とか「試合なんかなかったよ」などと応えるところが、緊張状態にある人物は突然の質問に不意をつかれてあたふたとしたり、突拍子もない答を返してくるのだという。人間の振る舞いの深度をわきまえた方法が、時にコンピュータや機械のスキャン力にも拮抗するという話題である。
消費者の振る舞い方、あるいはインターネット上の人々の振る舞いをどう解釈するかも、実は定式を超えたところにおもしろい視点が隠れているかもしれない。しかもそれは、ごく普通のやり方だったりする可能性も多いにあるのだ。




