2007.02.01イメージが変わる、ノーベル財団のウェブサイト
ノーベル賞のウェブサイトをご覧になったことがあるだろうか。格式高い世界的な賞のサイトであるからして、真面目で厳粛なイメージのサイトだと思われるだろう。
ところが、ノーベル賞がこのウェブサイトから発光しているイメージは、それとはかけ離れている。シンプルなレイアウト、小さめのあっさりした文字使い、しゃれた写真のカットなど、ビジュアルに見ただけでも意外な現代性を思わせるが、中にあるそれぞれの要素にこれまた気の利いているものが多い。
たとえば、「ノーベル賞のレクチャーを聴く」。普通ならその場に居合わせるか、どこかのテレビが全録画して放送でもしてくれない限り見られないものだが、それがストリーミングで見られる。受賞者は誰も卓越した人物だが、ノーベル賞受賞記念のレクチャーとなれば、本格的な肝いりのはずである。
あるいは、「あの夢のような1週間」という部分をクリックすると、これまでの受賞者が授賞式のある1週間の間、どんな経験をしたかという話が出てくる。「パーティーでのアイスクリームの彫刻が忘れられない」とか「スウェーデンの王、王妃の横に立っているのは人生に1度きりの経験」といったような、ちょっとミーハーなコメントも出てくる。受賞者のパーソナリティーがにおってくる。
しかし何よりも感心したのは、「教育ゲーム」である(http://nobelprize.org/educational_games/)。ノーベル賞は、平和、文学、物理学、化学、医学、経済学の分野に分かれているが、この教育ゲームもそれぞれの分野に分類され、その分野で受賞した人々や団体の功績にちなんだゲームがプレイできるようになっているのである。
たとえば平和賞を見てみると、「平和の鳩」がある。核拡散防止に関するものだ。ゲームを始めよう。宇宙船に乗った鳩をクイズに従って飛ばさなくてはならない。クイズの内容はなかなかに高度で、「1970年の核拡散防止条約で核保有国として認められた5カ国」を世界地図の上でクリックして鳩を送る。ターゲットを間違うと、鳩は宇宙船に戻ってきて文句を言う。
あるいは、同じ平和賞にある「20世紀の衝突」は、インタラクティブな地図上に、20世紀の特定の時代の紛争地を呼び出せるというもの。さらに、「ジュネーブ条約」の規定に従って、戦争捕虜の収容所を建設するというゲームもある。求められる回答は、知っているようで本当は知らないものばかりだ。
「文学賞」を見ると、受賞作の内容に従って物語を進めていくものもある。「物理学賞」では最先端の顕微鏡を疑似体験するしくみ、そして「医学賞」ではバクテリアをやつけるにはどうすればいいかというクイズになる。すべて歴代のノーベル賞受賞研究に関連するものばかりで、しかもこの教育ゲームは、企業からの寄付金を得て製作されているものらしい。正直なところ、子供より大人がやってみて、一般知識のなさを自覚するいい機会となるようなゲームである
ウェブサイトは、自らのイメージを変革するツールでもある。ノーベル賞のサイトは、そんなことを考えさせる。伝統を忠実に表現するのも大切だが、現代性やテクノロジーがあるからこそ可能になるアイデンティティーの拡大の方法を、ウェブサイトを通じて実験することもできる。本体の組織変革が困難な場合には、なおさら重要なツールかもしれない。




