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2008.01.07本当のワークプレース・デザイン

最近はどの会社でも、ワークプレースのデザインを気にかけるようになった。 ワークプレースのデザインは、仕事の効率化をはかるだけでなく、 職場のコミュニケーションの質やそこで働く人々の気分にも大きな影響を与えるものだ。 すばらしいオフィス家具が導入されているといったレベルを超えて、どのようにデスクが配置され、 どの部分がオープンでどの部分が閉じているのかなど、本当のワークプレースのデザインには実に細やかな配慮が必要となる。

先だって、 ある大手自動車メーカーのロサンゼルス郊外にあるデザイン研究所を訪問したが、なるほどと思えるようなしくみがたくさんあった。 少しここでお伝えしよう。

自動車メーカーのデザイン研究所は、未来型モデルのデザイン・ コンセプトを生み出す場所である。研究所員は、手を動かして実際のデザイン作業を行うが、 それ以前に想像力をたくましくして新しいコンセプトを練り出す思考作業も必要になる。

カリフォルニアは、年中を通して暖かな気候に恵まれているが、 このスタジオでは外部にテラスがあり、ここに配置されたテーブルまわりで所員がひとりでくつろげるようになっている。テラスなど、 今やどこのオフィスにもあるだろうと思われるかもしれないが、これ見よがしの見せるテラスではなく、ここは隠すテラス、 つまりオフィスの前面ではなく、背後に隠されているのが印象的だった。誰にも邪魔されることなく、 静かに考えることができるような外部空間だ。

共有するべき知識が廊下に張り出されていたり、 廊下からよく見えるようになっているのもおもしろい。例えば、 戦後以降の自動車モデルに使われた色と素材をまとめたプレゼンテーション・ボードが廊下に長々と張り出されていたり、 実際の塗料の塗布作業が廊下から直に見えるようになっていたりする。わざわざ会議を開かなくても、 日々の仕事のプロセスの中で重要なデザイン要素が共有できるしくみだ。

実際に自動車のモデルをつくるスタジオとデザイナーのオフィスとの関係もうまく考えられていた。 体育館ほどの大きさの大空間の中心は、新しい自動車の粘土モデルが配置され、 その周りにドローイングやデッサンを張り付けるボードがたくさんある。そして研究所員の個人オフィスは、 この大空間の周縁にガラス箱のように並んでいるのである。

この構成によって、所員は自分の仕事をしながら、 大空間で進んでいる作業を視覚的に確かめることができ、必要に応じてすぐに大空間のスタジオに出てくることもできる。 他の所員とのコミュニケーションも容易で、プライバシーと共同作業が無理なく共存するわけだ。

極めつけは、もうひとつの外部テラスと三次元スクリーニング・ルーム、 そして映像制作室である。

外部テラスは、上記したスタジオから直接外部に開く前面ガラス扉の外にある。 スタジオで作られた自動車モデルをそのまま外に出して、 自然光の中で距離を持ちながら確かめることができるように考えられた場所である。

三次元スクリーニング・ルームは、 自動車のエクステリアやインテリアを文字通り実物大の三次元映像にして、その形態や空間をシミュレーションするための部屋。 前面に大きなスクリーンが配置され、 数十人が同時にその映像を見ることができるようになっている。

映像制作室は、言ってみればこの研究所全体の映像制作を担っている場所だが、 現在われわれは現実のモノと同時に、映像によってその印象を成り立たせていることを考えれば、 まるで映画会社のように専属の映像制作担当者がいるのも納得のいくことである。

ワークプレースのデザインと言えば、 とかく大胆なデザインのオフィス空間が語られることが多いが、実はこの研究所の建物自体は20年以上も前に建設されたごく普通の建物である。だが、 その仕事に本当に必要なものは何かが熟考され、さらに20年の年月を経て作り上げられてきたという環境である。 デザイン自体が一人歩きすることの方が危険だと知っておくべきかもしれない。

個人のワークプレースであれ、企業のワークプレースであれ、 工夫するところはまだまだある。そう感じさせられた。