2008.02.01革新性がファンへの「不親切」になってしまう時
「買った製品がすぐ時代遅れになる」。これは、アップル・ コンピュータの製品を購入した人々が、最近口々に漏らしている不満である。
ご存知のように、アップルはiPodで幅広い消費者にファン層を広げた。 iPodが発売されるまでは限られたファンが熱狂的に好むコンピュータ会社だったが、iPod はインターネットの音楽ダウンロード販売との組み合わせで、まるでかつてのソニー・ ウォークマンのような革命を起こしているのである。
ところが、そのiPodだけでも今やかなりの種類が発売されている。最初のiPodは、 今やクラシックという名前になっているが、最初のバージョンはちょっと重くていつもバッグに入れて持ち運ぶのがつらかった。 そのすぐ後にiPodシャッフルという超小型版が、さらにその後にiPodナノが発売される。 シャッフルはダウンロードした音楽のプレイ順番が選べないが、ナノはクラシックの機能をそのままにして小型化したので、 こちらに乗り換えた人は多いことだろう。確か1年もしないうちに数万円の出費ということになる。
そのナノは、その後もどんどん新しいバージョンが出ている。 アップルのことなので、軽いのにスクリーンがぐっと大きめになるなど、機能もメモリーも大幅に改良されているので、 ファンならばすぐに目移りして欲しくなるはずである。
日本では未発売だが、 アメリカではその間にあのiPhoneが出た。携帯電話機能、ウェブによるインターネット・アクセスの他に、 iPhone機能、そしてビデオが見られる。「それならば」とこちらに乗り換えた人も多かった。しかも、 このiPhoneは発売前から超人気で、昨年6月の発売日にはどのアップルショップでも長蛇の列ができ、 6万円以上もするiPhoneを手にするためにみなが必死になった。ところが、 たったその数ヶ月後に値段が2万円以上も下げられるというハプニングが起こって、ファンを混乱させるのである。
値下げの理由は、iPodのビデオ版iPodタッチが発売されたからである。 iPodにiPhone並みの鮮明なスクリーンをつけ、iPhoneと同様にビデオが見られるほか、 指で操作するタッチスクリーンもある。携帯電話の通信機能がない以外は、ほぼiPhoneと同じで、 大騒ぎをしてiPhoneを購入した人々は、「こんなことなら、もうちょっと待てばよかった」とこぼしている状態だ。
1月に開かれる恒例のマックワールド・ コンファレンスでは今年、世界最薄のラップトップが発売されて話題になったが、ここでも一部のファンを唖然とさせることがあった。 ワイヤレスに自動バックアップをする「タイム・カプセル」という新製品の発表だ。タイム・ カプセルはワイヤレスのベースステーションとディスクドライブを兼ねていて、 コンピュータで作成したドキュメントやファイルがどんどんバックアップされる。
ところが、アップルの別製品である「エアポート・ エクストリーム」というワイヤレスベース製品と、それに接続するハードドライブ製品がほんの数ヶ月前に発売されたばかりだったのだ。しかも、 タイム・カプセルはエアポート・エクストリームとの接続が不可能なのである。エアポート・エクストリームを買ってしまった人々は、 「こんな製品が出るのなら教えてくれればいいのに」と、恨み節になっているのである。
新製品が既存のプラットフォームの上で、 補完や改良を行うのならばいいのだが、まったくゼロから新しくなってしまうために、古いものがそのまま移行できない。それこそ、 アップルらしさだし、アップル・ファンとしては最新の製品を使いたいと思うのが当然だが、新製品の発表のたびに自分の持ち物が 「古くさくなってしまった」という嫌な気持ちに苛まれるというサイクルが、アップルではいつも起こるのである。
これが計算の上のことならば、 うまいマーケティングと言うしかないが、これはデスクトップやラップトップでも起こっていて、 革新的なアップルが次々に新製品を発表する裏では、何だか冴えない気分になるファンがたくさんいるというわけだ。今や多くのアップル・ ファンは新製品が発売されても「しばらく様子を見よう」という姿勢になっているらしいというから、 ちょっと度が過ぎたという方が正しいだろう。
新しい製品や技術へどう消費者を導いていくのか。 ここにも企業のキャラクターが見て取れるのである。




