2009.04.02インターネットのクラウド上で行われるカスタマー・サービスとは?
「クラウド・ソーシング」ということばを聞かれたことはあるだろうか。
「クラウド」とは、つまり人々がつながったインターネットのこと。「ソーシング」はアウト・ソーシングにあるように発注を意味する。 つまりインターネッットに向かって発注するということだ。
オープンソースで人々がボランティア的にソフトウェアを開発するのも、クラウド・ソーシングの一種だが、最近はもっと積極的なクラウド・ ソーシングが取りざたされている。なんと、「カスタマー・サービス」のクラウド・ソーシングである。
コンピュータや電子デバイスを使っていて、こんな経験をされた人は多いだろう。操作していると取扱説明書にはない画面表示になった、 あるいはOSや他にインストールされているアプリケーションとの噛み合いが悪いのかうまく操作できない… ……。
こうした時、メーカーのカスタマー・サービスに連絡を取ってみると、たいてい次のような手順を踏むことになる。接続やスイッチから始まって、 こちらが正しく機器を用いているかの確認があり、その後1つひとつ順を追って、いろいろクリックしながらやりとりを進め、 操作と画面を確認し合っていく。そして、5、6分も経った頃にやっと件の問題点の話題に到達したものの、カスタマー・サービスの係員は 「おかしいですねえ」などと言って、問題がなかなか解決されない。
こういう時、役に立つのがインターネットの検索だ。問題点を表現するキーワードをいくつか入力すると、あるわ、あるわ。 同じ問題に悩んだ人々が掲載している問題解決方法があれこれ出てくるのである。
実は、アップルのアメリカでのiPhone接続問題のように、 当初メーカーが問題点を認めたくないケースなどもあり、企業サイトのFAQ (よくある質問)はほとんど役立たずということも少なくない。こういう時にインターネットに尋ねれば、 自分がたったひとりでその問題に直面しているわけではないことがわかって心強くなり、ラッキーな場合には時間をかけずに解決できるのだ。
インターネット上には、メーカーからお金ももらっていないのにこうした役に立つ情報を自主的に載せている人々がたくさんいる。 これを商売にしようというのが、カスタマー・サービスのクラウド・ソーシングという新しい潮流である。
たとえば、ゲット・ サティスファクションという会社がある。同社は企業向けにクラウド・ソーシングのカスタマー・サービス・プラットフォームを提供し、 ここで製品に対していろいろ質問のある顧客と、企業側の人間がひとつのコミュニティーをつくってやりとりできるようにしている。
マイクロソフト社の新しいサービス「フォトシンク」の例を挙げよう。「フォトシンク」は、複数の人々が撮った写真をジオ・ タギング技術によってひとつの3次元の写真として統合する技術である。そのユーザーと開発者がゲット・ サティスファクションのサービスでつながっているのだが、ユーザー側には開発者側が考えもしなかった問題点にぶちあたったり、 面白いアイデアを持つ人々がいたりする。
そうした人々に対して、他のユーザーがアドバイスをしたり、 アイデアにまた別のアイデアを付け加えたりしてコミュニティーが醸成されていくというわけだ。マイクロソフト側は、 そうしたコミュニティーの動きをモニターしながら、アイデアをサービスに統合したり、クレームに膨らむ前に対処することができるのである。
クラウドで活動する人の特徴かもしれないが、 こうした投稿にはカンカンに怒っているようなタイプがあまり見当たらないのは興味深いことである。 それにクレームとして文句をつけるのではなく、新しいアイデアとして提案をしようという「前向き」な投稿が多い。
おそらく、それがクラウドのマナーでもあるのだろうが、怒り心頭に達する前にこうしたサイトに投稿できること、 また企業担当者と1対1で話すのではなくて、他のユーザーやカスタマーもいるコミュニティーの中で対話する1対多数という環境も、 陰湿で気まずい雰囲気を排除する助けになっているのかもしれない。怖い顧客とのやりとりで四苦八苦している企業にとっては、朗報だろう。
ゲット・サティスファクションの他にも、SaaS (サービスとしてのソフトウェア)大手のセールスフォースが、ささやきブログTwitterをカスタマー・ サービスのツールのひとつに組み込んだ。Twitter界で人々が自社製品についてささやき合っていれば、 それをいち早くモニターして問題に対処しようというわけだ。
不特定多数のインターネット住人を信頼していいのか。しかも、カスタマー・サービスの一環に交えてしまっていいのか。 企業がこの問いに悩むのは当然のことだろう。だが時代はますます、その方向へ向かっているようである。




