米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2010.04.02スマートフォンのアプリケーションは、「富山の薬売り」みたいである

アメリカでは、4月3日のiPad発売を前にソワソワした気分が充満しているが、最近の「アップ(アプリケーション)」のことを考えていて、これは「富山の薬売り」のようだなあと思い始めた。

iPhoneのおかげですっかり広まったが、サードパーティ(外部)開発のアプリケーションをひとつのアップ・ストアーにまとめてアクセスしやすくするというのは、もともとアップルのアイデアではない。私が覚えている限り、セールスフォースというソフト開発会社が先にやっていた。

セールスフォースは、企業の顧客管理ソフト(CRM)を提供する会社で、どこよりも先んじてクラウドでそれを提供し始めたところだ。セールスフォースは、自社のソフトに統合できるサードパーティのソフトを一カ所に集めていて、ユーザーがそこから使えるものを選んでいけば、セールスフォースのCRMの使い勝手自体が向上すると考えたのだ。

iPhoneはそれを一般のユーザーに対して行なった。アプリケーションの中には、仕事や健康管理に使えるものなど本当に便利なものがあり、今や自社ですべてをやろうとせず、こうしたサードパーティの力を借りてこそ、おもしろい製品が作れる。またユーザーは、好きなアプリケーションを集めて自分だけのセレクションを作れるというカスタマイズの楽しさも味わえる。おもしろい時代になったものだ。

そして、「アプリケーション」という概念自体もかなり変わっている。アプリケーションと言えば、以前はコンピュータの中の道具のようなもので、それを持っていることで何かの作業が可能になるというタイプだった。表計算とかドキュメント作成とかである。コンテンツは自分で作ったり、また別のところから引き出してきたものだ。

ところが今のアプリケーションは、「使い勝手とコンテンツが一緒になったもの」と言えるだろう。先にアプリケーションを広げておいて、そこへコンテンツを載せて閲覧するのではなく、その二つは一体化している。しかも、ネットに接続されているので、ソフトもコンテンツも刻々とアップデートできる、というより、アップデートされているのだ。

そう考えると、富山の薬売りに似ていないだろうか。お客様の自宅にまずは薬箱をお届けし、そのコンテンツをいつも切れないようにしながら充実させていく、という感じ。お客様からやってきてもらうのではなく、こちらから出かけて、常にお客様の薬箱を管理しておくのである。

アプリケーションは、ユーザーがコンテンツを見るのにわざわざウェブサイトへ行ってリンクをクリックするといったことなしに、いつでも最新の内容が手元に送られている。

スマートフォンのアプリケーションを多用するユーザーならば、もうブラウザーを使うことすら面倒だと感じかねないだろう。ニュースや雑誌サイトも、ブラウザー上の情報ではなく、アプリケーションとしていつもアップデートされている。

そう考えると、企業のメールニュース、何かの同好会やファンクラブ、デパートのセール情報も、アプリケーションとしてすませればいいのである。使い勝手も一定ではなく、面白いテクノロジーが時折入っていたりすれば、もっと楽しいだろう。現在のところは、携帯会社あるいは通信会社がアップ・ショップの審査を行い、関門を築いているのが、やや面倒な手続きではあるが……。

こういうアプリケーションの概念がすっかり変わっていた。そんな実感である。