米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

m.c.t.ホーム > エクスペリエンスマガジン > 米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子 > 返品プロセスを顧客満足として、どう向上させるか

2014.01.24返品プロセスを顧客満足として、どう向上させるか

アメリカは返品の国である。そう書くと少々誇張気味ではあるが、実際、店で買った商品を返品することに対して、遠慮や抵抗、罪悪感はない。また売った店側も、本心はともかくとしても、イヤな顔ひとつせずに返品を受け入れるのを常としている。「お気に召さなければ、いつでも返品して下さい」という姿勢が、今や顧客満足度を大きく左右する要素だと思われているのだ。

最近、この返品に関して、ちょっと学ぶことがあった。アマゾンで注文した商品を返品する際の、その手続きまわりにまつわることだ。それはこんな具合だった。

注文したのは、ある家庭用の消耗品。価格は45ドル程度のものだ。商品が届いてから、近所の量販店で同じような別メーカーの製品が3分の1ほどの値段で売られているのを見つけた。インターネットで調べてみると、ユーザーの評価は同程度。買った方のメーカー品は以前も購入して使って不備がないことはわかっていたが、別のメーカーの商品も試してみたい。しかもそんなに安いのならば......。そこで、アマゾンで買った商品を返品することにした。

日本でも同じかと思うが、アマゾンでの返品では先にサイト上の自分のアカウントから、返品を申請する必要がある。返品希望とクリックしてから、次に理由を選ばなければならない。それがかなり詳細にわたっている。「間違って注文した」「箱がつぶれていた」「予定の日に届かなかった」「もういらなくなった」「商品記述と違っている」などと一緒に、「もっと安く売っているのを見つけた」という項目もある。もちろん、「不良品」「部品が欠けている」「注文したものを違う」といった通常の項目もある。

私は、もちろん「もっと安く売っているのを見つけた」を選んだわけだが、それを選ぶとさらに詳しい内容を書き込むようにと指示が出る。つまり「どこの店で、いくらで売られていましたか?」と質問してくるのである。この質問に答えることは「必須」となっていて、ここを空欄にしたままには返品はできない。したがって、「同類の商品が、近所の○○ストアーで○ドルで売っていた」といったような文章を書き込むわけだ。

感心するのは、アマゾンはおそらくここでかなりの情報を集めているということだ。ユーザーにもっとも安い値段で多様な商品を提供することを目指しているアマゾンとしては、特に他店でより安く売っていることを見逃すことはできない。それをこうして調べているわけである。アマゾンはデータ重視で有名で、こうしたところにもその一端が見て取れる。

その後は、申請を書き込んだ後に表示される送付票をプリントアウトし、それを送付用の箱に貼付ける。日本のように便利な宅急便のシステムはないので、配送業者の店頭にまで持っていく。係員が送付票のバーコードをスキャンしてくれれば、それで発送は完了だ。驚いたのは、ここである。係員がスキャンするやいなや、私のメールにアマゾンからの連絡が入るのだ。「返品を受け付けました。支払われた代金から送付料を差し引いた○ドルを、クレジッドカードに返金します」という内容だ。たいてい、オンラインで購入したものを返品すると、いつまでも返金されなかったり、あるいは返品を受け付けた連絡がなかなかこなかったりして、イライラするものである。アメリカでは郵便がなくなることもたまにあるので、いったい到着したのかどうかが気になり始める。アマゾンのこのやり方は、そのあたりのユーザーの不安をすっきり取り除いてくれるし、売るだけでなく返品に対しても万全のシステムを整備しているのだということがわかる。これは、しくみとしては簡単なもので、提携している配送業者のシステムとアマゾンのシステムを結びつけただけ。返品申請の手続きが終わったコード番号が、係員のスキャンで照合されるやいやな連絡が入る。そして、返金手続きも開始されるのだろう。実際、他のオンラインショップに比べて、アマゾンの返金はかなり早かった。

最近のオンラインショップでは、返品を前提としたサービスも多くなっている。前回取り上げたような、ショッピングに行きたくない男性たちにコーディネートした洋服一式を送ってくれるサービスなどもそうだ。女性のオンラインショッパーの返品はもっと多いはずである。同じ返品を受け付けるのならば、そのプロセスをすっきりと簡単に、そして迅速なものにした方が印象はずっといいということだ。

ここで感心したのは、商売の負の面においてもテクノロジーを用いて顧客満足の向上を図れるということ。返品もそうだし、苦情もそのカテゴリーに入るだろう。ひょっとすると、そのうち、他社と価格や機能を比較するような機能なども入ってくるかもしれない。ここはまだ未開拓の領域なのである。