米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2014.02.10トラックフード人気の理由

サンフランシスコは今、食のメッカになっている。
そう言うと、観光地としても人気のある都市なので、いろいろなレストランがあって当たり前だと思われるだろう。ところが、現在のサンフランシスコはこれまでのレストランという形態を外したところで、おもしろい食の動きが起こっているのだ。
そのひとつは、トラックフードの流行だ。
トラックフードは、日本風に言えばランチの時間にオフィスの近くに駐車して、そこからお弁当を売るランチトラックのようなものである。ただ、ランチトラックと異なるのは、それがランチだけでないこと、そして新しい味を試す若いシェフたちの戦場となっていること、また組織化されていることだ。
サンフランシスコのトラックフードは、ランチ時間にオフィス近くの車道からランチも売っているが、それだけではなく夜でも町のどこかの場所で営業をしていることが多い。トラックによって、いつどこにいるか決まっている場合もあるが、たいていはツイッターなどでファンにリアルタイムで居場所を知らせていたりする。神出鬼没の屋台のようなものだが、屋台自体、サンフランシスコのような都市にはこれまであまりなかったもの。そのせいで若い人々を中心に大きな人気を呼んでいる。
トラックフードの「フード」が、また工夫に溢れている。ペルー風サンドイッチとか、中華風タコスといったような、聞いたこともない料理が出てくるのだ。ランチ時間に普通の店へ行くと、多少の違いはあっても、ハムとチーズを挟んだようなサンドイッチしか売っていないだろう。だが、フードトラックでは、刺激的な味を楽しめるのだ。
こうしたフードトラックは、シェフを目指す若者が自分の味をトライするために運営していることもある。店を出すお金はないが、トラックを借りるくらいならばできる。そこで、自分のクリエーションを出すのだ。だから、ただのファストフード風のトラックフードではなく、意欲的な食が味わえるというわけだ。
トラックフードはうまく組織化されているのも特徴だ。つまり、一匹狼のトラックフードはあまりない。たとえばサンフランシスコでは「オフ・ザ・グリッド」という組織が取りまとめている。この組織は、それぞれのトラックフードのために路上営業の許可を取ったり、何曜日にどこに誰が出店するかを調整したり、週末などは公園でドラックフードを勢揃いさせて、人々がピクニックに来られるように仕組んだりといったことをする。オフ・ザ・グリッドのアプリも出して、ファンにはすぐにトラックの居場所やイベントがわかるようにしている。
特にこの週末の昼や夜のピクニックは人気で、これまでならば友達と出かけるにもレストランに行くしか選択肢がなかったのに、カジュアルで肩が凝らず、値段も安くて味も新しいというトラックフードをいくつも試してみることができるようになった。
トラックフードはランチ時間でも夜でも、いつも行列ができるほどに人気だ。勝手に人気の理由を分析すると、人々は食べる方法や場所のバラエティーを楽しんでいるのだと思われる。毎度違ったレストランへ行ってもいいが、レストランはレストラン。その様式やサービス、店の基本的な構成に大きな変化はない。
だが、トラックフードで食事を買うのは、まったく文脈の異なる話だ。座る場所もないだろう。公園でのピクニックならば、自分で折りたたみ式の椅子も持参しなければならないかもしれない。そんなランダムでアドリブ風なところが、今や新鮮に感じられるのだ。
考えてみると、これまで我々はレストランの味やインテリアの違いなどを詳細にわたって論じて評価したりしてきたわけだが、もうそのこと自体に飽きてしまったのはないだろうか。同じ領域内での違いよりも、まったく異なった領域へ飛びたい。トラックフードの人気は、人々のそんな心情を映し出しているように見えるのだ。


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