米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

m.c.t.ホーム > エクスペリエンスマガジン > 米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子 > ソーシャル・ネットワーク派か検索派か?

2011.11.04ソーシャル・ネットワーク派か検索派か?

日本でもフェイスブック、リンクトインなど、アメリカ発のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が使えるようになってきた。もともとソーシャル・ネットワークは、友達や知人、仕事仲間が集える場所で、その中で日々の情報交換をするのが基本的な機能である。だが、最近はこのSNSがインターネット生活の入り口になるようなサービスが充実してきた。そのひとつは、メディア消費をこのサイト上でやるようなサービスだ。

たとえば、フェイスブックは先だって日本にも上陸した動画ストリーミングのフールーや、音楽ストリーミング・サービスのスポッティファイと提携。友人たちが観たテレビ番組や聴いた音楽を見られるようになった。これをクリックすれば、自分も同じコンテンツにアクセスできるというものだ。ニュース・メディアも同様のサービスを開始し、フェイスブックの友人がどんな記事を読んだのかがわかるようになっている。その友人が、日頃その情報収集力のすごさに感心しているような人物ならば、そんな記事の存在はぜひとも知りたいところだろう。それが自動的にわかるようになったということだ。

かくしてフェイスブックは、メディア・コンテンツ消費のプラットフォームにもなろうとしているのだが、普通の消費も先へ進めている。フェイスブックを介した商品販売はいまやeコマースならぬ「fコマース」と呼ばれていて、これをどう利用するのかが商業界の課題だ。「fコマース」にはいろいろなかたちがある。もちろん、どこかのメーカーがフェイスブックにアカウントを設けて、ファンを集わせているような方法。ここから、商品を買うリンクに誘うこともできよう。あるいは、今はソーシャル・ゲームで使われているが、誰が何を買ったといったような情報が共有される方法。そして、これはアマゾンが利用しているが、アマゾンとフェイスブックを部分的にリンクするような方法。このふたつをリンクすると、友人の誕生日と、その友人がアマゾンのウィッシュリスト(欲しいものリスト)に挙げている商品がわかったりする。気の利いたバースデー・プレゼントが贈れるというわけだ。

フェイスブックを使っている人ならば知っているだろうが、フェイスブックはプライバシー問題で何度も苦情の的になっている。数年前も、フェイスブック上の友人が買ったものが自動的に他の友人に公開されたりして、プライバシー侵害の訴訟が起こされたくらいである。したがって、上に挙げたようなサービスはすべてユーザー本人の了承の元に公開されるようになっている。しかし、こうしたサービスを統合することで、フェイスブック自体の構造がますます複雑になっているのだが、同時にフェイスブックがますますインターネット生活、いや、生活自体のインフラのようになってきたのではないだろうか。これを便利と取るか、あるいはやり過ぎと取るか。

確かに、フェイスブックの常用者ならば、このサイトからいろいろ他のことが済ませられるのは便利だろう。クリックひとつとは言え、別のサイトに移ったりするのはめんどうくさい。それをフェイスブックのサイトに居ながらにしてできるような工夫がなされているのだから、便利と言えば便利だ。だが、落とし穴も忘れてはならない。友人のお勧めばかり追っていると、結局視野が限られてくる危険性もある。大雑把に言えば、友人とは自分にどこか似た人たち。そのサークルの中だけで物ごとを済ませていると、大きな外の価値観に閉ざされた自分たちだけの世界を作りかねないのだ。

いずれにしても、フェイスブックのようなSNSはこれからますます複雑に発展していく。1日をフェイスブックの中だけで過ごすのか、あるいは検索を使ってもっと広いインターネットの世界を探検するのか。インターネット生活の方法は、何通りもあることを忘れないでおきたい。