米国マーケティング最新事情 - 瀧口範子

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2012.01.18デジタル・デバイスのためのアナログなイノベーション

ここ数年は、iPhoneやiPadなど、面白いデバイスがたくさん発表された。もちろんアップルの製品だけでなく、グーグル、サムスン、ソニー、アスース、レノボ、HPなどからも次々と新製品が出されている。

こうしたデバイスの特徴は、これひとつでいろいろなことができること。つまり、いつも手にして、接している時間が長いということだ。それも関係しているのだろう。よく見ていると、こうしたデバイスの周辺製品にも面白いものがたくさん出てきた。周辺製品といっても、いわゆる周辺機器のことではない。もっとアナログだが、こうしたデジタル・デバイスを使いやすくし、また機能を拡張するような工夫の凝らされたものである。

そうした製品で、話題になっているものをいくつか拾ってみよう。たとえば、「タッチファイアー」というキーボードカバー。これはまだ開発中だが、前評判はすでに上々である。シリコン製のシートで、これをiPadに表示されるバーチャル・キーボードの上に重ねて使うというものだ。バーチャル・キーボードにはタイプを打った時の感覚がなくて、これが使いにくいと訴えるユーザーも多いのだが、このタッチファイアーを重ねると、何とモノとしてのキーボードがそこに生まれるのである。いわゆるタクタイル・フィードバック(感触的なフィードバック)を指に与えるので、キーボードを打っている感覚が戻り、打ちやすくなる。タッチファイアーは、ほとんど重量がなく、かさばらない。iPadのカバーの下に重ねておいても、まったく邪魔にならないという優れものだ。バーチャル・キーボードの問題を解決するために、外付けの折り畳み式キーボードやキーボードを光でプロジェクトするしくみなどが考案されているのだが、タッチファイアーはそうした大げさな道具立てなしに、スラリと問題を解決した例である。なかなかスマートな製品だ。

ティクトク」という製品もある。これは、iPod nanoを収めるリスト・バンドである。ゴムと留め金を精巧にデザインして作られたもので、iPod nanoをパチンとはめ込めば、すぐにスマートな時計になるというもの。もちろん、そのまま音楽も聴ける。バッグや服にクリップしていたiPod nanoを手首につければ、なくすこともないし、何と言っても使いたい時にすぐに使える。これまでもジョギング時などに使える同じようなしくみのものがあったが、布製だったりして、おしゃれ度が低かった。それをティクトクはオフィス街でもおかしくないようなデザインと精密な機能性を施して、人気を得たのである。バンドのサイズも自分で調整できる。

タッチスクリーン用の手袋などもいろいろ出ている。寒い外でiPhoneをいじりたいが、手袋を外すのは嫌だという向きに好評だ。手袋の指の先にゴムをプリントしただけのようなものもあるが、スクリーン上ですべらない特殊な素材を施したものもある。何と言っても便利だし、指先におもしろいデザイン心が見られたりしてユーモラスでもある。

上に挙げた以外にも、iPad上で使える極小ジョイスティックとか、おどろくような製品開発もある。出てきては消えてしまう製品もあるが、人気を呼び、口コミでどんどん売れていく製品も多い。何と言っても、デジタルだけでなく、アナログ面からこうした周辺製品が生まれるのが興味深いし、実はこうしたアナログ製品がデジタル製品の冷たさや素っ気なさを和らげてくれる役割も果たしている。今アメリカでは手芸も流行っているのだが、これからは、けっこうこうしたアナログ分野でのイノベーションが隆盛してくるのではないかと、私は期待している。